Krea 2 Turboの4ステップ蒸留LoRAをVRAM 16GBで実測|RTX 5080・5060 Tiで1.5〜1.8倍速くなる

Krea 2 Turbo 4ステップ蒸留LoRAに関する記事のアイキャッチ画像 - Krea 2 Turboの4ステップ蒸留LoRAをVRAM 16GBで実測 ComfyUI

この記事の要点

  • 公式推奨の8ステップを4ステップに落とせる。 土台がKrea 2 Turboであることと、LoRA側の利用条件の確認が前提になる
  • 生成はRTX 5080で1.5倍、RTX 5060 Tiで1.8倍速くなる。 短縮は1本ごとに効くので、枚数を出すぶんだけ総量として積み上がる
  • VRAM 16GBのカードで完走する。 LoRAなしで4ステップに落とすと絵が変わるので、出方をほぼ保ったまま短縮するならLoRAが要る

この結果が言える範囲: 2026年9月4日、上の2枚 (5080はPCIe x16で画面出力を兼ね、5060 TiはOCuLink) のVRAM 16GBで、fp8_scaled版をbf16指定で実行。1024×1024・起動後2本目の3本の中央値です。配布元の公開値はApple Silicon (MLX・bf16) のもので条件が違います。固定費への分解が読めるのは5060 Tiのみ。VRAMのピークは確保の結果で必要量ではありません。画質はseed 12345・プロンプト1本での見え方です。連続生成の推移 (10本・50本と続けたとき) は測っていません。

先に結論: 速くはなる。ただし配布元の数字はそのまま当てはまらない

Krea 2 Turboは、公式が8ステップ・ガイダンス0.0を推奨している画像モデルだ。そこへ4ステップまで落とすための蒸留LoRAが出ている。配布元の説明では、8ステップから4ステップになって全体でおよそ1.6倍速くなる。

手元のRTX 5080とRTX 5060 Tiで測ると、5080では1.51倍、5060 Tiでは1.84倍だった。配布元の1.6倍はこの間に入るが、カードによってこれだけ分かれる。この開きは1つの理由では説明できず、後の節で2つに分けて見る。少なくとも4〜8ステップの実測では、LoRAの上乗せはステップ数に比例するというより1本ごとの上乗せとして現れた (5080で+0.876秒と+0.886秒、5060 Tiで+0.585秒と+0.276秒)。ただし、傾きと切片に分けて「固定費」として取り出せたのはRTX 5060 Tiだけで、5080は測定が直線に乗らない。その事情も含めて次の節で見る。

ただし配布元が併記している副作用のほうは、この構成では再現しなかった。配布元は1ステップあたり約13%遅くなり、ピークメモリが約1.3GB増えると書いている。この記事の測定では、1ステップあたりの時間はほとんど動かず、VRAMのピークも条件間で重なった (ただしピークは必要量ではない。後述する)。理由ははっきりしていて、配布元の数字はApple Silicon (MLX・bf16) で測られている。同じ配布ページはfp8_scaled版がApple Siliconでは動かないとも書いており、公開されている数字はそのApple Silicon側のものになる。NVIDIAでfp8_scaled版を回したときの値は、配布ページには載っていない。

この記事は、同じ機材で Krea 2 本体を扱ったKrea 2をローカルで動かす要件とライセンス|12B画像モデルの必要VRAMと量子化(ComfyUI)の続きにあたる。前回はモデルを16GBに収めるところまでを扱った。今回はそこにLoRAを1つ足して、ステップ数だけを動かしている。同じ骨格で動画モデル側を測ったものがMiniMax H3 Turbo LoRAは何倍速い?|ComfyUIで4〜8ステップ・RTX 5080/5060 Ti実測になる。

このLoRAは何か、誰が作ったものか

測ったのはlvladikovがHugging Faceで公開している4ステップ蒸留LoRAで、Kreaからのリリースではない。rank 64で、配布時点のチェックポイントは6万サンプルまで学習が進んでいる。学習方法は段階的な蒸留に敵対的な評価器を組み合わせたもので、プロンプト側は公開データセット、画像側は高解像度の実写を品質で選別したものを使っている、と配布元は説明している。

使う前に押さえておく点が3つある。

1つはライセンスの記載が無いことだ。配布ページにライセンスの明示が見当たらない。

土台のKrea 2 TurboはKrea 2 Community Licenseで、こちらには条件が付いている。モデル本体だけでなく、そこから派生したもの (Derivative) と生成物 (Output) の商用利用が、会社全体の直近12か月の売上が100万米ドル未満である場合に限って認められる。これを超える規模ではEnterprise Licenseが別に要る。売上は関連会社を含む全収益源で数える形になっている。あわせて、モデルまたは派生物をデプロイする際には適切なコンテンツフィルタリングの実装が求められ、利用規約の遵守も条件になる。

このLoRAはKrea 2 Turboを土台にした蒸留物なので、ライセンスが言う派生物の定義に該当すると考えて扱うのが安全だ (蒸留やマージを経たものを派生物に含む書き方になっている)。ただしKreaがこのLoRAについて個別に判断を示しているわけではない。そのうえでLoRA側に独自の条件が書かれていないため、利用・再配布の条件は配布元へ確認する前提になる。土台側の100万ドルの線引きは、LoRAを使ったかどうかに関係なく該当する。詳しくはKrea 2をローカルで動かす要件とライセンスで扱っている。

2つめはTurbo専用であること。配布元は「このLoRAはKrea 2 Turboで、Turbo自身を教師として、Turboのために学習した」と書いている。Krea 2 Rawに当てた場合の結果は題材次第で安定せず、ステップ数を大きく落とすと頭が二重になる、手足がつながる、顔が閉じないといった崩れ方をする、とも明記されている。Rawから入るならまずTurboへ移るように、という案内になっている。

3つめは作業中の配布であること。配布元自身がwork in progressと位置づけていて、学習は続いている。ファイル名にチェックポイント番号が入るものと_latestが並んでおり、_latestのほうは常に最新版を指す入れ物として運用されている (ファイル自身のメタデータにもrolling_pointer: yesと書かれている)。つまり同じファイル名でも中身は入れ替わる。

この記事が測ったのは、2026年9月4日時点で_latestが指していたchk00060000 (学習サンプル6万) になる。safetensorsのメタデータにcheckpointtraining_samplesが入っているので、手元のファイルがどれかは後からでも確認できる。学習は配布元によればRTX 3090 24GB 1枚で行われている。

配布元の数字はApple Siliconのもの

配布元の数字をそのまま自分の環境に当てはめると、実際の使用感とずれる。理由は次のとおりだ。まず配布元が挙げている数字を並べる。

  • 1024×1024・Apple Silicon (MLX・bf16)・プロンプト2本ずつ・厳密に1本ずつ実行という条件で、Turbo 8ステップが合計88.7秒、Turbo 4ステップ+このLoRAが合計54.5秒
  • 1ステップあたりでは、LoRA無しが9.7秒、有りが11.0秒。約13%遅い
  • ピークメモリは27.1GBから28.4GBへ、約1.3GB増える

なお、この合計値と1ステップあたりは掛け戻しても一致しない。配布ページ上で別々に示された値で、どこまでを1本として数えているかがページからは確定できないため、この記事では合計値を1本あたりの秒数としては使わない。8ステップと4ステップの比 (約1.6倍) だけは、両方が同じ数え方である限りこの不確かさに左右されないので、位置の目安として引用する。

この3点はどれも、そのままNVIDIA + VRAM 16GBの環境に持ち込めない。

メモリの数字は桁が違う。 27.1GBから28.4GBというのは、統合メモリを積んだMacでbf16のまま回したときの話だ。12Bのモデルをbf16で持てば本体だけで24GB前後になるので、この数値は素直に読める (公式モデルカードは本文で12B、ページのメタデータ欄では13Bと表記が割れている)。一方この記事の構成はfp8_scaled版で、VRAM 16GBのカードに載せている。絶対量が違う以上、「+1.3GB」が同じ形で乗ってくるとは限らない。

1ステップ9.7秒という速度も、実装が違う。 同じ1024×1024を後述のとおりRTX 5080でfp8_scaled版を回すと1ステップ1秒前後で、Apple Silicon側の約10分の1になる。速度がこれだけ違う環境で測った相対値を、そのまま持ち込む根拠は無い。

そして決定的なのが、配布元が公開している測定環境では、fp8_scaled版を動かせないことだ。配布ページは対応する軽量版としてint8とfp8_scaledを挙げたうえで、fp8_scaledはNVIDIAでは動くがApple SiliconではMPSがFloat8_e4m3fnに対応していないため動かない、と書き分けている。ベンチマークとして公開されているのはそのApple Silicon側の値なので、この記事が測っている構成の数字は配布ページに存在しない。配布元がNVIDIAで測っていないかどうかは、ページからは分からない。

測定条件: 何を固定し、何を動かしたか

動かしたのはステップ数とLoRAの有無だけで、残りは6条件 (4・8・12ステップ × LoRAの有無) すべてで同じにしてある。

  • モデル: krea2_turbo_fp8_scaled.safetensors / テキストエンコーダ: qwen3vl_4b_fp8_scaled.safetensors / VAE: qwen_image_vae.safetensors
  • 1024×1024・cfg 1.0・euler・simple・denoise 1.0。LoRAのstrengthは配布元の推奨どおり1.0
  • ComfyUI 0.31.1 / torch 2.9.1+cu128 / ドライバ610.47
  • 起動オプションは --reserve-vram 1.5 --preview-method none --bf16-unet --bf16-text-enc で共通 (各フラグが何に効くかはComfyUIの起動オプション実測ガイドで扱っている)。使ったのはfp8_scaled版のチェックポイントで、ComfyUIのログは量子化メタデータを読んだうえで mixed precision quantization を検出し、model weight dtype を bfloat16 と表示する。ファイル上の量子化形式と、実行時に重みがどう保持され何のdtypeで計算されるかは一致しないので、この記事では「fp8_scaled版をbf16指定で回した」という条件として扱う
  • 各条件について「ComfyUIを起動 → 1本目 → 2本目 → 終了」を3回繰り返し、2本目 (warm) の3本を集計に使う。1本目はモデル読み込みを含むので分けている。表に載せた秒数は3本の中央値になる
  • 所要時間はComfyUIが記録する実行イベントの差を使う。完了検知のポーリング間隔に影響されない値になる
  • seedは実行ごとに変えている。同じseedだとComfyUI側の実行キャッシュが返ってサンプラーが再実行されない

2枚のカードには揃えられない差が1つ残っている。RTX 5080は画面出力を兼ねていて、測定開始時点で約1,500 MiBが既に使われている。RTX 5060 TiはOCuLink接続で画面を出しておらず、開始時点は0MiBだった。--reserve-vram 1.5は両方に共通で差には効かないため、カード間で残るのは画面出力ぶんで、ComfyUIが使える量は5080のほうが約1,500 MiB少ない。

この差はVRAMの話だけに閉じない。後で出てくる5080側の3つの癖 — 同条件3本の振れ幅が大きいこと、1ステップあたりが直線に乗らないこと、1本あたりの上乗せとして見える値が5060 Tiより大きいこと — は、いずれも「使える量が少ない側で起きている」という点で共通している。別々の現象とは限らないが、切り分ける測定はしていないので共通原因だとも決めつけない。

実測: 4ステップにすると何秒になるか

まず本命の比較から見る。公式推奨の8ステップ (LoRA無し) と、配布元推奨の4ステップ (LoRA有り) を並べる。いずれも3本の中央値で、括弧内は3本の範囲になる。

カード LoRA無し・8ステップ LoRA有り・4ステップ 倍率
RTX 5080 (PCIe x16) 8.605秒 (8.600〜8.710) 5.697秒 (5.585〜6.037) 1.51倍
RTX 5060 Ti (OCuLink) 18.607秒 (18.600〜18.722) 10.122秒 (9.904〜10.191) 1.84倍

どちらも速くなっている。配布元が挙げる約1.6倍はこの2枚の間に入るが、測った実装も精度も違うので、値が近いこと自体を裏づけとしては読めない

ただし倍率がカードで違う点は、そのまま受け取らないほうがいい。倍率を決めているのは削れる絶対量ではなく、総時間に占める短縮の割合だ (5080が33.8%、5060 Tiが45.6%)。そしてこの開きは2つに分かれる。1つは、LoRAを抜きにして8ステップから4ステップへ落としたときの短縮がもともと違うこと (5080で1.79倍、5060 Tiで1.95倍)。もう1つは、LoRAが足す上乗せ自体がカードで違うこと — 同じ4ステップで5080が+18.2%、5060 Tiが+6.1%になる。1.51倍と1.84倍の開きは、この2つがおよそ半分ずつ寄与した結果で、「同じLoRAだから上乗せも同じで、カードの速さだけが倍率を変えている」とは読めない。内訳は次の節で分解する。

同じステップ数で比べる — 遅くなるのは1ステップではなく1本ごと

配布元は「1ステップあたり約13%遅くなる」と書いている。ステップ数を揃えて比べれば、この上乗せだけを取り出せる。ここから先は再現性の検証にあたる部分で、倍率とVRAMの結論は変わらない。

カード ステップ LoRA無し LoRA有り
RTX 5080 8 8.605秒 9.491秒 (9.080〜9.633) +10.3%
4 4.821秒 (4.819〜4.980) 5.697秒 +18.2%
RTX 5060 Ti 8 18.607秒 18.883秒 (18.858〜19.321) +1.5%
4 9.537秒 (9.529〜9.541) 10.122秒 +6.1%

ここで手が止まる。同じLoRAなのに上乗せが+1.5%から+18.2%まで散らばっていて、しかもステップ数が少ないほど上乗せが大きい。1ステップあたりが一律に重くなるなら、こうはならない。

先に断っておくと、+1.5%という値は差として読めない。 同じ条件で3本回したときの振れ幅が、5060 Tiの8ステップ (LoRA有り) で2.5%ある。振れ幅より小さい差は、この測定では「差が無い」と「差が見えない」を区別できない。

ステップ数が少ないほど上乗せが大きいという並び方は、増えているのがステップに比例するコストではなく、1本ごとに乗るコストであることを示唆している。これを確かめるため、12ステップも同じ手順で測って3点にした。

カード 条件 4ステップ 8ステップ 12ステップ
RTX 5080 LoRA無し 4.821秒 8.605秒 13.609秒
LoRA有り 5.697秒 9.491秒 13.819秒
RTX 5060 Ti LoRA無し 9.537秒 18.607秒 27.792秒
LoRA有り 10.122秒 18.883秒 28.348秒
RTX 5060 Ti: LoRA の上乗せはステップ数と一緒に増えないRTX 5060 Ti で LoRA を当てたときの上乗せ秒数を、4・8・12ステップで並べた棒グラフ。実測は +0.585秒・+0.276秒・+0.556秒 とほぼ横ばいで、ステップ数に比例した場合の破線 (+0.585秒・+1.170秒・+1.755秒) から離れていくことを示す。上乗せはステップ数と一緒に増えないRTX 5060 Ti・1024×1024・起動後2本目の3本の中央値。LoRA有りと無しの差を秒数で見る0.0秒0.5秒1.0秒1.5秒2.0秒+0.585秒+0.276秒+0.556秒4ステップ8ステップ12ステップ破線 = ステップ数に比例した場合
青い棒は実測の上乗せ (LoRA有り − LoRA無し)。破線はステップ数に比例した場合で、4ステップの値を基準に置いた線。8ステップの +0.276秒 は同条件3本の振れ幅 0.463秒 の内側で、差としては読めない。

ここで見るべきは割合ではなく秒数のほうだ。ステップ数を増やしても、上乗せの秒数は消えない。 5060 Tiの上乗せは4ステップで+0.585秒、8ステップで+0.276秒、12ステップで+0.556秒。点ごとに0.276〜0.585秒と振れるが、ステップ数と一緒に増えてはいかない。一方で割合は6.1%→1.5%→2.0%と、総時間が伸びるぶん小さいところへ移る。5080も4ステップで+0.876秒、8ステップで+0.886秒とほぼ同じ秒数が乗る (12ステップだけ+0.210秒に落ちるが、5080の3本の振れ幅が4.5%あるためこの1点は差として読めない)。

これは1回の生成ごとに乗るコストがあるときの形になる。ステップに比例するコストなら、割合ではなく秒数のほうが増えていくはずだ。12ステップで割合が小さく見えるのは上乗せが消えたからではなく、ステップ数に比例しない数百ミリ秒の上乗せを払いながら分母が伸びたからで、支払いは残っている。

次に、3点から直線を引いて1ステップあたり (傾き) と1本あたりの固定費 (切片) に分けたい。ただしその前に、どの条件が直線に乗っているかを確かめる必要がある。乗っていない条件から引いた切片を「固定費」と呼ぶことはできない。

カード 条件 4→8の1ステップあたり 8→12の1ステップあたり 直線からの最大ずれ
RTX 5080 LoRA無し 0.946秒 1.251秒 (+32%) 0.407秒
LoRA有り 0.949秒 1.082秒 (+14%) 0.178秒
RTX 5060 Ti LoRA無し 2.267秒 2.296秒 (+1.3%) 0.038秒
LoRA有り 2.190秒 2.366秒 (+8.0%) 0.235秒

素直に直線へ乗るのは4条件のうち1つ (5060 TiのLoRA無し) だけだった。とくに5080のLoRA無しは、8ステップから12ステップにかけて1ステップあたりが32%も増えている。

5080では、傾きと切片に分けること自体が成立していない (固定費の増分は「LoRA有りの切片 − LoRA無しの切片」なので、LoRA無し側が直線に乗らない時点で分離できない)。 5080のLoRA無しに直線を当てると切片は0.224秒になるが、同じ当てはめの最大ずれは0.407秒あり、ずれのほうが切片より大きい。実際この直線から本命の2条件を戻すと9.01秒対5.61秒=1.61倍になり、実測の1.51倍と合わない。

背景として、5080は測定そのものが安定していない。同条件3本の振れ幅は、5060 Tiが0.1〜2.9%に収まるのに対し、5080は1.3〜8.1%ある。以下の分解はRTX 5060 Tiの値を主に読み、5080は参考として扱う。

ただし読者が実際に使う4ステップの範囲では、この当てはめの問題は結論を変えない。倍率 (1.51倍・1.84倍) も上乗せ (+18.2%・+6.1%) も、直線ではなく実測値そのものから出しているためだ。

カード 条件 1ステップあたり 1本あたりの固定費
RTX 5060 Ti
(LoRA無しは直線に一致
LoRA有りは0.235秒のずれ)
LoRA無し 2.282秒 0.390秒
LoRA有り 2.278秒 0.892秒 (+0.50秒・±0.235秒の幅)
RTX 5080
(参考・当てはめ不良)
LoRA無し / 有り どちらも約1.0〜1.1秒
(区間で見ると0.946秒対0.949秒)
切片は両行とも分離できず
(LoRA無しは残差0.407秒 > 切片0.224秒)
増分だけを当てはめごと差し引くと1秒前後 (0.9〜1.4秒)

5080の1ステップあたりを2行に分けて書かないのは、分けると差があるように見えてしまうためだ。最小二乗の傾きだけを取ると1.098秒対1.015秒になるが、この低下は当てはまりの良い4→8区間ではなく、8→12区間でLoRA無しだけが跳ねた分を拾ったものになる。

1ステップあたりは、LoRAを入れて増えていない。 5060 Tiで2.282秒から2.278秒と、ほとんど動かない (この0.2%の差は3本の振れ幅より小さく、差として読めるものではない)。5080は直線当てはめが使えないが、当てはまりの良い4→8区間だけを取ればLoRA無し0.946秒・有り0.949秒で、こちらもほぼ同じだ。分解が読めるのは5060 Tiだけでも、「1ステップあたりが増えていない」こと自体は2枚ともほとんど動いていない。 配布元が挙げる「1ステップあたり約13%遅い」は、この構成では出ていない。

増えているのは固定費のほうで、5060 Tiでは+0.50秒になる。これは各点の実測差 (0.276〜0.585秒) をそのまま平均した値ではなく、3点を直線で近似したときの切片の差だ。ただしこの+0.50秒にも幅がある。固定費の増分は「LoRA有りの切片 − LoRA無しの切片」なので、LoRA有り側の当てはまりがそのまま増分の確からしさを決める。上の表のとおり5060 TiのLoRA有りは直線から0.235秒ずれており、増分0.50秒の半分近い。

5080の「約1秒」は、代表値に3本のどれを採るかで0.9〜1.4秒まで動く。5080側で言えるのは「1秒前後の何かが1本ごとに乗っている」までで、5060 Tiの0.50秒との差を機構として論じられる精度は無い。

候補の1つは、LoRAのパッチ適用や重みの再配置にともなう処理だ。もう1つ、後のVRAMの節で見るように、LoRA有りの条件では生成の合間の常駐量が1,900〜2,400 MiB 低く、1本あたりにPCIe経由で読み直す量の中央値が増えている。どちらも生成1本ごとの上乗せを生みうる候補だが、今回の測定では内訳を分離していない。合成が1本につき何回走るのか、転送のうちどれだけが上乗せの本体なのかは測っていない。なぜ秒数がカードで違うのかも同じで、読み直す量が増えるのは5080のほうが大きい (+1.7 GiB対+0.85 GiB) が、5080はリンクが太いぶん同じ量でも時間は短くなるはずなので、読み直しの量だけでカード差の向きは説明できない。

VRAMは16GBの中でどう動いたか

配布元が挙げる「約1.3GB増」が16GBのカードで起きるなら、それは実用上の分かれ目になる。Krea 2はfp8_scaled版でもピークが15,000 MiB前後まで来るので、そこに配布元のいう約1.3GBを足す余地はほとんど無い。

カード 条件 VRAMピークの範囲 (3本)
RTX 5080
(開始時点で約1,500 MiB使用)
LoRA無し・8ステップ 15,306〜15,611 MiB
LoRA有り・4ステップ 14,026〜15,599 MiB
LoRA有り・8ステップ 15,543〜15,578 MiB
LoRA無し・4ステップ 15,276〜15,385 MiB
RTX 5060 Ti
(開始時点0MiB)
LoRA無し・8ステップ 14,532〜14,788 MiB
LoRA有り・4ステップ 14,054〜14,278 MiB
LoRA有り・8ステップ 13,926〜14,278 MiB
LoRA無し・4ステップ 15,012 MiB

ピークは13,926 MiBから15,611 MiB (約13.6〜15.2 GiB) の帯で重なっていて、ピーク値で見るかぎりLoRAの有無で系統的に増える並び方はしていない (5080の値には画面出力ぶんの約1,500 MiBが含まれる)。表に載せていない12ステップの条件も同じ帯に収まり (5080が15,019〜15,315 MiB、5060 Tiが13,990〜14,532 MiB)、6条件すべてが16GBの中で完走した。

ただし5060 TiでLoRA有りのほうがピークが低いことを「増えていない証拠」としては読めない。同じログの別の列を見ると、逆向きの並びが出ている。2本目を始める直前にGPUへ残っている量 (常駐量) が、LoRA有りの条件では系統的に低い。

カード 条件 2本目開始直前の常駐量
(4・8ステップ6本の中央値)
1本あたりのPCIe受信量
(同じ6本の中央値)
RTX 5080 LoRA無し 13,563 MiB 2.70 GiB
LoRA有り 11,134 MiB (−2,429 MiB) 4.40 GiB
RTX 5060 Ti LoRA無し 13,604 MiB 0.10 GiB
LoRA有り 11,686 MiB (−1,918 MiB) 0.95 GiB

常駐量については、4ステップ・8ステップの24本すべてが同じ向きに出ている (12ステップを含めた36本でも変わらず、LoRA有りの最大値がLoRA無しの最小値を下回る)。読み直す量のほうは1本ごとの振れが大きく、そこまできれいには分かれない (5080でLoRA無し0.5〜8.2 GiB、有り0.5〜14.5 GiB) が、中央値で見ると両方のカードで増える側に出ている。ピーク値では増加が見えない一方で、常駐量は下がり、読み直す量の中央値は増えている。この2つが同じ機構によるものか (ピークに出ないぶんが読み直しへ回っているのか) は、この測定では確かめていない。言えるのは、LoRAを足したぶんのコストがどこにも出ていないのではなく、ピークという指標には出ていない、というところまでになる。

これを「LoRAはVRAMを増やさない」と読むと行き過ぎになる。 ComfyUIは使える量に合わせて確保のしかたを変えるので、ここで見ているピークは「必要量」ではなく「その条件で結果的にどこまで使ったか」だ。同じ性質はComfyUIで使えるVRAMを絞ると画像・動画生成は遅くなるかでも出ていて、申告量を絞ればピークはそれに追随して下がる。ピークが低い条件のほうが余裕がある、とも読まない。 この測定から言えるのは「16GBの範囲で6条件とも完走し、ピーク値としてはLoRAによる増加が観測されなかった」までで、必要量そのものが変わらないことの証明にはならない。

画質: 同じ種で4条件を並べる

速度だけでは判断材料にならないので、seedを12345に固定して同じプロンプトで1本ずつ出した (速度で測った6条件のうち、実際に使う4つ)。速度側はキャッシュを避けるため毎回seedを変えているので、こちらは別に撮っている。基準は公式推奨のLoRA無し・8ステップで、以下はそれと比べた残り3条件の見え方になる。1つの種・1本のプロンプトでの見え方なので、題材を変えれば違う出方をしうる。

  • LoRA有り・4ステップ: 素の8ステップに近い。構図はわずかに引き気味になるが、破綻は無く、毛の流れも保たれている。配布元が狙った使い方どおりの結果になる
  • LoRA無し・4ステップ: 崩れはしない。頭が二重になるような壊れ方は出なかった。ただし絵が変わる。模様の出方が違い、細部が甘くなり、ヒゲのような細い線が減る
  • LoRA有り・8ステップ: 4条件で最も細部が立つが、輪郭が強く出て硬い印象になる。配布元は4ステップを推奨しており、8ステップはその範囲外の使い方になる

LoRA無しの4ステップが崩壊しなかったのは、土台のKrea 2 Turbo自体が既に蒸留を経たモデルで、少ないステップにある程度耐えるためだと考えられる。配布元がRawについて書いている崩れ方 (頭が二重になる、手足がつながる) は、Rawを試していないので確認していない。今回のTurbo + fp8_scaled版では、LoRA無しの4ステップでもその種の崩れは出なかった。

この記事が測っていないこと

  • bf16での比較。手元の16GBにbf16版は載らないため、配布元と同じ土台での比較はしていない。fp8_scaled版での結果をbf16版へ持ち込めるかは別の測定が要る
  • 画質の定量評価。目視での比較にとどまり、指標での採点はしていない。プロンプトも1本だけになる
  • 解像度と題材の広がり。1024×1024の1条件のみで、縦横比を変えた場合や人物・文字を含む題材では出方が変わりうる
  • Krea 2 Rawでの検証。土台をRawに替えた場合は測っていない
  • 連続生成を続けたときの推移。1回の起動につき2本までしか回しておらず、集計に使うのは各起動の2本目 (3回の起動で3本) だけになる。10本・50本と続けたときに1本あたりの秒数や短縮量が動くかは見ていない
  • チェックポイントの違い。配布は学習継続中で、測定に使ったのはchk00060000のComfyUI変換版1つになる。以降のチェックポイントで挙動が変わるかは追っていない
  • 2枚のカードの直接比較。5080は画面出力を兼ね、5060 TiはOCuLink接続で条件が揃っていない。カード間の秒数を性能差として読むことはできない
  • 5080で1ステップあたりが一定にならない理由。8ステップから12ステップにかけて32%増えているが、VRAMの逼迫なのかクロックの変動なのか、切り分けていない。ステップ数を細かく刻んだ測定と、クロック・温度の同時記録が要る
  • 常駐量が下がるぶんが何に使われているか。LoRA有りで常駐が1,900〜2,400 MiB 低く、読み直す量の中央値が増えているところまでは見たが、それが速度のどこに出ているかは分離していない
  • 1本あたりの上乗せとして見える値がカードで違う理由。5060 Tiの+0.50秒に対し5080は約1秒だが、5080側は当てはめが成立していないため、差そのものを追える精度が無い
  • 5080の使えるVRAMが約1,500 MiB少ないことの影響。振れ幅の大きさ・非線形・上乗せの大きさの3点に共通の原因かどうかは、画面出力を外した5080での再測定が要る
  • RTX 5070 Ti。同じVRAM 16GB帯だが今回は測っていない。倍率は1本あたりの生成時間とLoRAの上乗せの両方で決まるため、5080と5060 Tiの値から中間を推定することはしない

導入前に押さえる点

読み込むファイルは1本だけで、ComfyUI標準のLoRAローダーで読める。カスタムノードは要らない。配布ページには_latestとチェックポイント番号入りが並ぶが、中身が入れ替わらない番号入りのほう (この記事が測ったのはchk00060000のComfyUI用ファイル) を取ると、あとから条件を確認できる。置き場所はComfyUIのmodels/lorasで、ワークフロー上はモデルを読むノードとサンプラーの間にLoRAを適用する段を挟む。ComfyUI側の導入とVRAMの前提はKrea 2をローカルで動かす要件とライセンスで扱っているため、ここでは繰り返さない。

設定は配布元の推奨に従い、ステップ4・strength 1.0・ガイダンスはComfyUIでcfg 1.0にする。土台はTurboにする (配布元がTurbo専用として学習・配布しており、Rawでの挙動はこの記事では試していない)。

まとめ

このLoRAで変わるのは、8ステップに近い絵を半分のステップ数で出せることだ (構図はわずかに引き気味になる)。8ステップで回していた工程を4ステップにでき、1本あたりの時間は5080で8.6秒から5.7秒、5060 Tiで18.6秒から10.1秒になる。短縮は1本ごとに効くので、枚数を出すぶんだけ総量として積み上がる (測ったのは起動して2本目までで、続けて出したときの推移は見ていない)。ここでの秒数は起動して2本目に出したときのもので、1本目はモデルの読み込みを含む。

判断材料は3つに絞れる。土台がKrea 2 Turboであること (配布元はRawでは安定しないと明記しており、この記事はRawを試していない)、VRAM 16GBに収まること (6条件とも完走したが余裕は大きくない)、ライセンスの確認が要ること (LoRA側に条件の記載が無く、土台側には売上100万ドルの線引きがある)。この3つが自分の使い方で問題なければ、入れて損はない。

試す順番としては、いま8ステップで出している絵と、4ステップにした絵を、自分がよく使う題材で並べるところから入るのが早い。この記事で見たのは猫1匹・seed1つでの出方なので、人物や文字を含む題材では違う結果になりうる。置き方と設定は前の節のとおりで、変えるのはステップ数だけになる。

よくある質問

結局、入れる価値はあるか

いま8ステップで出しているなら、4ステップに落として5080で1.51倍・5060 Tiで1.84倍速くなる。絵は素の8ステップに近いが、構図はわずかに引き気味になる (見比べたのは1つの種・1本のプロンプト)。短縮は1本ごとに効くので、枚数を出すぶんだけ総量として積み上がる (ただし測ったのは起動して2本目までで、10本・50本と続けたときの推移は見ていない)。ただし土台がTurboであることと、LoRA側の利用条件を配布元に確認したうえで使える用途に限られる。

LoRAを入れずに4ステップにするのでは駄目なのか

速度だけならそのほうが速い (5080で4.821秒対5.697秒)。同じ種で見比べると絵が変わるので、8ステップの出方に近いまま短縮したいならLoRAが要る、という関係になる。

VRAM 16GBで足りるか

今回の6条件はすべて16GBのカードで完走した。ピークは13,926〜15,611 MiB (約13.6〜15.2 GiB。5080は画面出力ぶん約1,500 MiBを含む) で、余裕は大きくない。ただしこのピークはComfyUIが使える量に合わせて確保した結果で、必要量そのものではない。他のアプリがVRAMを使っている状態では、確保のしかたごと変わる。

配布元の「13%遅い」は間違いなのか

間違いというより、測った環境が違う。配布元はApple SiliconのMLXでbf16版を回しており、この記事はNVIDIAのCUDAでfp8_scaled版をbf16指定で回している。同じLoRAでも、乗る実装が変われば上乗せの出方は変わる。配布元の数字を否定するのではなく、適用範囲が違うと読むのが正確になる。

参考資料

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