ローカルでLLMや画像生成を動かしていると、「SSDを速いものに替えれば生成も速くなるのでは」「メモリを増やせば大きいモデルが動くのでは」という疑問にぶつかります。この問いを考える材料になるのが、COMPUTEX 2026でLexarがASUSと発表した協業です。AI処理がクラウドからローカル機器へ降りてくる流れの中で、ストレージとメモリの役割が変わりつつあるという内容で、展示にはASUS NUC 15 Proという小型PCと、AI向けに設計されたGen4 SSDが並びました。ここで多くの読者が知りたいのは、こうした製品ニュースが「自分の手元でAIを動かす環境」にどう関係するのか、という一点でしょう。
結論を先に言ってしまうと、ストレージとメモリがローカルAIで体感を左右する場面は、思っているより限られています。通常のローカルAI環境では、速いSSDに替えても生成そのものはほとんど速くなりません。では何が変わり、何が変わらないのか。当サイトの実測データを交えて切り分けていきます。
- SSDの速さが主に効くのはモデルの読み込み時。VRAM容量はモデルが収まるかを決め、収まった後の生成速度はLLMのデコードならVRAM帯域、プリフィルや画像生成ならGPU演算性能が主役(容量を足すだけでは速くならない)
- VRAMに収まらない大型モデルを動かすときは、大容量メモリ(RAM)が現実的な逃げ道になる
- 「メモリ使用量を削減」といったストレージ側の発表値は、展示・コンセプト段階の主張として、実機で確認できる事実と分けて受け取る
COMPUTEX 2026で示された「AI時代のストレージ」の変化
Lexarは記憶媒体とストレージのグローバルブランドで、今回ASUSと組んでAI向けの製品群を披露しました。発表のトーンで一貫しているのが、ストレージを「ただ容量を確保するだけの受け皿」ではなく、性能を左右する能動的な部品として位置づけ直そうとしている点です。
LexarのCTOであるDaniel Guo氏は、発表の中で次のように述べています。
AI処理がクラウドからローカル機器へ移るにつれ、ストレージは単なる受動的な容量以上のものになりつつある。AIシステムがモデルを読み込み、データを動かし、遅延を減らし、安定した性能を保つうえで欠かせない要素になっている。Lexar CTO Daniel Guo氏、COMPUTEX 2026での発表より(英文発表の趣旨訳)
メーカーの発表である以上、自社製品を中心に置いた語り口になっている点は割り引いて読む必要があります。とはいえ「AIがローカルへ降りてくる」という大きな流れ自体は、業界全体で進んでいるものです。NVIDIAが台湾の製造エコシステムと組んでデータセンター規模のAIインフラを拡張している話も、同じCOMPUTEX 2026で語られました。スケールはまるで違いますが、データを高速に供給する仕組みがAIの性能を左右するという方向性は、データセンターから手元の小型PCまで共通しています。この視点を手元の環境に引き寄せると、SSDとメモリのどこにお金をかけるべきかが見えてきます。
ASUS NUC 15 Proと組み合わせたAI対応Gen4 SSDという展示
今回の展示で具体名が確認できているのが、ASUS NUC 15 Proと、それに組み合わせるAIグレードのGen4 SSDです。手のひらサイズの小型PCでもローカルAIを動かす想定が示されたかたちになります。あわせて、より柔軟な拡張を狙った「ストレージスティック」のコンセプトについても、ASUSと技術的な議論を続けると発表されました。コンセプト段階の話なので、現時点では製品仕様として確定したものではありません。
携帯ゲーム機向けでは、PLAY XというPCIe 4.0対応のM.2 NVMe SSDがASUS ROG XBOX ALLYと並べて展示されました。M.2 2230と2280の両方に対応するとされていますが、本記事の主題はローカルAI環境なので、こちらは発表された展示事実として触れるにとどめます。
なぜAIでデータとストレージが「中心」と言われるのか
「ストレージがAIスタックの中心」という言い回しは、Lexarだけのものではありません。Dell Technologiesの幹部も、企業のAI活用ではデータとそれを支えるストレージの役割が過小評価されている、と指摘しています。The Next Platformが伝えたこの議論を消費者向けに翻案すると、要点はシンプルです。
GPUは、それ単体ではただ電力を消費するハードウェアにすぎません。価値が生まれるのは、適切に整えられたデータをGPUへ途切れなく供給できたときです。学習・推論の精度はデータの質に左右され、データの準備が不十分なら出てくる答えの精度も落ちる。だからこそ、GPUへデータを送り込むストレージとメモリの設計が問われる、という論立てになっています。
これは企業のデータセンターを想定した話で、規模感は手元のPCとかけ離れています。ただ、ローカルでAIを動かす立場に引き寄せると、応用できる視点が一つあります。「GPUを良いものにすれば全部速くなる」わけではなく、データの読み込みと保持の経路まで含めて初めて快適に動く、という発想です。ローカルAIでこの経路にあたるのが、SSDの読み込み速度であり、システムメモリの容量。ここを次の章で具体的に切り分けます。
ローカルAIでSSD速度が効く場面・効かない場面
ここが本記事でいちばん伝えたい部分です。SSDを速いものに替えたのに、画像生成やテキスト生成のスピードがまったく変わらなかった。そういう声は珍しくありません。原因は、SSDが働く場面と働かない場面を分けて理解していないことにあります。
SSDの速度が体感に出るのは、主にモデルファイルをストレージからメモリへ読み込む場面です。ローカルLLMの重みは数GBから数十GB、ComfyUIで使う画像生成モデルのチェックポイントも数GB単位。これらを最初に読み込むとき、特に初回(コールドロード)ではSSDの転送速度が待ち時間に響きます。ただし単純に転送速度へ比例するわけではなく、OSのファイルキャッシュ(一度読んだモデルはRAMに残る)、モデルの展開処理、CPU性能なども絡みます。モデルを頻繁に切り替える使い方なら、ここの差は積み重なります。
一方、いったんモデルがVRAMに載ってしまえば、その後の生成処理にSSDはほぼ関与しません。モデルがフルにGPUへ載っている場合、テキストを1トークンずつ吐き出す処理も、画像を1ステップずつ描いていく処理も、主なテンソル計算はGPUとVRAMの間で行われます(CPUでの制御・トークナイズ・サンプリングやPCIe転送などは残り、部分オフロード時はシステムRAMも継続的に使われます)。生成中の速度を主に決めるのは、まずVRAM容量がモデルの収まりを決め、そのうえでLLMのデコードでは主にVRAM帯域、プロンプト処理(プリフィル)や画像生成ではGPUの演算性能であって、いずれにせよストレージではありません。ここを取り違えると、効かない場所にお金をかけることになります。
| ローカルAIの場面 | 速度・容量を決める主な要素 | SSD速度の影響 |
|---|---|---|
| モデルの初回ロード | ストレージ読み込み速度 | 大きい |
| テキスト・画像の生成中 | VRAM帯域(デコード)・GPU演算性能(プリフィル/画像生成)※容量は「収まるか」を決める | ほぼなし |
| RAMオフロードで動かす大型モデル | CPU性能、RAM容量・帯域、CPU/GPUの分割率、PCIe転送 | 小さい(ディスクオフロード/OSスワップ時は別) |
| ComfyUIでのモデル切り替え | ストレージ読み込み速度 | 大きい |
まず押さえる:モデルの置き場所はVRAM→RAM→SSDの3段構え(あふれると“下”に転落して遅くなる)
SSDが効く・効かないを分ける前に、AIがモデルを置く場所には速さの違う3段があることを押さえておくと、話が一気に分かりやすくなります。
なお、この図は厳密な実装図というより、ローカルAIで体感速度を考えるための概念図です。実際にVRAM・RAM・SSDのどこをどう使うかは、使う実行環境(Ollama・llama.cpp・ComfyUIなど)やオフロードの設定によって変わります。
この速さの差は、物理的な距離というより接続方式と帯域・遅延の差です。VRAMはGPU専用の広帯域インターフェースで接続されています。一方、システムRAMはCPUのメモリコントローラに接続され、離散GPUとのデータ移動ではPCIeを介します。SSDはさらにストレージI/Oを挟むため、オフロードで段を下るほど帯域が細く遅延が大きくなります。だからモデルはできるだけVRAMに置きたい。丸ごと収まればフルスピードで動きます。ただし、収まらない分が自動的に1段下へ落ちるわけではありません。実行環境がCPUオフロードに対応していれば、あふれた分はRAMへ配置され、CPUとやり取りする分だけ遅くなります(これがRAMオフロード)。対応していなければCUDA OOMなどで停止します。RAMも足りずOSのスワップが有効なら、さらに下のSSDへ仮想メモリとして退避が始まり、ここまで来ると速度は一気に落ちます(内蔵GPUやユニファイドメモリ機ではこの構造が異なります)。
つまり「生成中はSSDが効かない」というのは、モデルがVRAM(か、あふれてもRAM)に収まっている限りの話です。VRAMもRAMも足りずスワップにまで転落した状態では、いくらSSDが速くても焼け石に水で、まず見直すべきはRAMとVRAMの容量になります。長文でVRAMがどれだけ増えてあふれるかは、16GBでKVキャッシュ膨張を実測した記事で詳しく扱っています。低スペックのPCでいきなり大きいモデルを動かして「全体が急に重くなった」ときは、原因の一つとしてRAMオフロードやOSスワップへの移行が考えられます(熱によるクロック低下や他プロセスのメモリ消費なども関わります)。Windowsならタスクマネージャーの「メモリ」使用率、GPU側はnvidia-smiのVRAM使用率を見れば、どちらが先に埋まっているか確認できます。
逆に言えば、SSDを大きくしても、RAMを増やしても、それだけで大きいモデルが快適に動くようになるわけではありません。快適に動くかどうかは、まずモデルがVRAMに収まるかで大きく変わり、収まった後はVRAM帯域やGPU演算性能、実行環境などが速度を左右します。RAMとSSDは、主に容量不足を補う逃げ場とモデルの保管場所です。この順序を押さえておくと、投資先を間違えずに済みます。
モデルのロードが遅いとき/推論そのものが遅いとき、原因は別
「遅い」と感じたら、最初に確認したいのが遅さの種類です。モデルを起動した直後の数秒から数十秒だけ待たされ、生成が始まれば快適なら、それはロード時間。SSDの速度や、モデルがメモリに常駐しているかどうかで変わります。
逆に、生成が始まってからの1トークンあたり、あるいは1ステップあたりが遅いなら、SSDをいくら速くしても改善しません。当サイトの検証環境(RTX 5080単体・think=false、各3回の中央値、2026年6月計測)では、同じGPU上でもモデルによって生成速度に大きな差が出ました。たとえば軽量なLlama 3.2 3B(Ollama: llama3.2:3b)は毎秒235トークン前後を記録した一方、Gemma 4 26B(Ollama: gemma4:26b)クラスになると毎秒66トークン前後まで下がります。この差はストレージとは無関係で、モデルの規模や構造、VRAM/RAMの使われ方から生まれるものです(なおこのGemma 4 26Bは、後述のとおりVRAM 16GBに収まり切らず一部がRAMへオフロードされた状態での値です。遅さの要因はSSDではなくGPU・VRAMとRAM側にあります)。
ローカルAI向けSSDの選び方|容量・PCIe世代・サイズの3点
ローカルAIを動かすPCでSSDを選ぶとき、気にすべき点は大きく三つあります。容量、PCIe世代の帯域、そしてM.2のサイズ(フォームファクタ)です。自作のデスクトップでも、今回展示されたASUS NUC 15 Proのような小型PCでも、考え方は共通しています。順に見ていきます。
まず容量。これはVRAMの大小とは別の話で、ローカルにモデルを何本置けるかで決まります。LLMの量子化済みモデルは1本あたり数GBから数十GB。ComfyUIで画像・動画モデルを複数そろえると、あっという間に数百GBに届きます。複数のモデルを使い分けるなら、1TBでは心もとなく、2TB以上が現実的な出発点になるでしょう。
次にPCIe世代。Gen4 SSDは理論帯域に余裕があり、巨大なモデルの読み込みでも待ち時間を短く抑えられます。Gen5になると帯域はさらに広がりますが、前章のとおり生成速度そのものは変わりません。Gen5で速くなるのは、あくまで読み込みと書き込みの場面に限られます。
最後にフォームファクタ。M.2 SSDにはM.2 2230やM.2 2280といった長さの違いがあり、特に小型PCやノートでは搭載できる長さがモデルごとに決まっています。SSDを選ぶときは、搭載先が対応するM.2の長さを先に確認しておくと安心です。携帯機や小型機のように内部スペースが限られるほど、この確認が効いてきます。
容量はVRAMではなく「モデルを何本ローカルに置くか」で決まる
ストレージ容量とVRAM容量を混同しないことが大切です。VRAMはモデルを高速に動かすための作業領域です。足りなければGPUだけには収まりませんが、実行環境が対応していれば、一部をシステムRAMへオフロードして速度を落としながら動かせる場合があります。ストレージはモデルを保管しておく棚で、足りなければ置けるモデルの本数が減るだけ。性能ではなく在庫の問題です。
たとえば10GB前後の量子化LLMを10本そろえても100GB程度で、ストレージ的には余裕があります。問題は、その中のどれをVRAMに載せられるか。そこはGPU側の制約であって、SSDの容量では解決しません。
ただし、この「モデルの本数で決まる」という見立ては、主にLLM(テキスト生成)を使う場合の話です。画像や動画の生成AIでは、モデルに加えて生成した出力ファイル自体もどんどん溜まっていきます。高解像度の画像やバッチ生成、まして動画となると、出力だけで数十GBから数百GBに膨らむこともあり、モデルの容量以上にストレージを消費していきます。LLM中心ならモデルの本数で見積もれますが、画像・動画の生成を回すなら「モデル+出力の蓄積」で多めに確保しておくと安心です。
VRAMやRAMに収まり切らない「あふれる」系のトラブルは、ストレージの速さや容量ではなく、VRAMとRAMの設計から考える必要があります。次はそのメモリ側の話です。
もう一つの壁=メモリ容量|DDR5大容量とRAMオフロード
ストレージと並んで今回の協業で前面に出たのが、大容量メモリです。具体名が確認できているのが、ASUS ROGマザーボードと組んで開発されたLexar ARES RGB DDR5で、128GB(64GB×2)・DDR5-6400・CL32という構成です。ゲーミング向けの製品ですが、ローカルLLMの運用でも大容量メモリが活きる場面があります。なお、この128GBキットはデスクトップ/ROGマザーボード向けのDIMMメモリで、ノート用の小型なSO-DIMMを使うASUS NUC 15 Proのような小型機には、そもそも形状が合わず載りません。この128GB DIMMキットのような最大級の容量を狙うなら拡張余地のあるデスクトップが前提になりますが、大容量RAMを使うローカルAIがデスクトップ限定というわけではありません(NUC 15 Pro自体も SO-DIMM 2基(1基あたり最大48GB)で合計最大96GBのDDR5に対応します)。
その場面が、VRAMに収まらない大型モデルをシステムメモリへ逃がす「RAMオフロード」です。モデルの一部をVRAMではなくRAM側に置き、CPUとGPUで分担して処理します。当サイトの検証環境(RTX 5080、VRAM 16GB)でも、16GBに収まらないモデルを動かす際にはRAM側への退避が起きます。VRAMで完結する場合に比べると速度は落ちますが、「動かないものを動かせる」だけの価値はあります。
ここで誤解しやすいのが、「メモリ容量が大きければ速くなる」という思い込みです。RAMオフロードは速度を犠牲にして容量の壁を回避する手段で、容量を足したから速くなるわけではありません。大容量DDR5が役立つのは、あくまでVRAMに乗り切らないモデルを動かしたいときの逃げ道として、です。
128GB級が活きるのは量子化大型LLMをRAMに逃がす運用
128GBクラスの大容量メモリが本領を出すのは、量子化した大型LLMをVRAMに収め切れず、RAMへ大きく逃がす運用です。VRAM 16GBのGPUで30B級以上のモデルを扱おうとすると、量子化方式やモデル構造(Dense/MoE)、コンテキスト長にもよりますが、相当な部分がRAM側へ回ることがあります。もっとも、MoE(Qwen3.5 35B-A3Bなど)は全エキスパートをメモリに載せるため必要メモリは総パラメータ数に概ね比例する一方、実際に計算するのは一部だけなので速度は総パラメータ数から予想されるより速くなります。メモリと速度で総パラメータ数の効き方が違う点に注意が必要です。いずれにせよ、あふれる規模を搭載メモリが少ない状態で扱うと、そもそもモデルが載りません。
当サイトの検証環境(RTX 5080単体・think=false、各3回の中央値、2026年6月計測)では、VRAM 16GBに対してGemma 4 26B(Ollama: gemma4:26b)がnvidia-smiのGPU全体使用量で15883MiB(約15.51GiB)、Qwen3.5 35B-A3B(Ollama: qwen3.5:35b-a3b)が15835MiB(約15.46GiB)を示しました。ただし、これらの標準タグのモデルはファイルサイズがgemma4:26bで約18GB、qwen3.5:35b-a3bで約24GBあり、いずれもVRAM 16GBには全体が収まりません。nvidia-smiがほぼ満杯を示すのは「ぴったり収まった」からではなく、載り切らない分がシステムRAMへオフロードされ、VRAM側が飽和しているためと考えるのが自然です。nvidia-smiはGPUメモリの使用量までしか示さず、モデルの何%がGPUで何%がCPU側にあるかは判定できません。Ollamaなら ollama ps のPROCESSOR欄で、100% GPU/100% CPU/分割率を確認できます。こうしてあふれた分を受け止めるのが大容量メモリの役割で、64GBや128GBという容量はここで意味を持ちます(速度値と併せて ollama ps の配置も残すと、第三者が条件を再現しやすくなります)。
「ストレージがAI推論を最適化」の主張をどう読むか
今回の発表では、Lexarがストレージ処理にハードとソフトを統合した「AI Storage Core」という仕組みを打ち出し、ワークロードの先読みやキャッシュ最適化を行うインテリジェント・スケジューリングでメモリ要件を抑えるといった内容も伝えられています。Lexarの発表では、この仕組みでDRAM容量要件を約40%削減できるとしています。ただしこの約40%は、あくまでインテリジェント・スケジューリング(Gen5コントローラー側の技術)に関するメーカー発表上の主張であり、ASUS NUC 15 Proと展示されたGen4 SSD単体で確認された値ではありません。メディアによる取材・デモ報告はありますが、独立した第三者が同条件で再現した検証結果は、現時点では確認できません。
こうした数値は、展示やコンセプトの場で語られるものと、手元の環境で再現できる事実とを分けて受け取るのが安全です。「ストレージがAI推論を最適化する」という言い回しも、本記事で見てきたとおり、生成中の速度は主にVRAM帯域やGPUの演算性能で決まるという事実とは切り分けて考える必要があります。ストレージ側の工夫で改善が見込めるのは、主にモデルの読み込みやデータの供給といった経路です。
メーカー発表を読むときの判断軸として、「それは読み込みの話か、生成の話か」を一つ持っておくと、過度な期待をせずに済みます。発表値そのものを否定する必要はありませんが、自分の用途のどこに効くのかを当てはめてから受け取ると、ハードウェア選びの判断を誤りにくくなります。
| 展示イベント | COMPUTEX 2026(2026年6月) |
|---|---|
| 小型AI PC | ASUS NUC 15 Pro + AIグレードGen4 SSD |
| 大容量メモリ | Lexar ARES RGB DDR5 128GB(64GB×2)/ DDR5-6400 CL32 |
| 携帯機向けSSD | PLAY X(M.2 2230 / 2280対応、PCIe 4.0) |
| SSDが効く場面 | モデルの読み込み・切り替え(通常構成では生成中の速度はほぼ変わらない) |
まとめ
ローカルAIでストレージとメモリが効く範囲は、役割ごとにはっきり分かれています。SSDの速度はモデルの読み込みと切り替えに効き、生成が始まればほぼ関与しません。大容量のDDR5メモリは、VRAMに収まらないモデルをRAMへ逃がす運用で活きますが、容量を足したから速くなるわけではない点に注意が必要です。そして生成中の速度を主に決めるのは、モデルがVRAMに収まったうえでの、LLMデコードならVRAM帯域、プリフィルや画像生成ならGPU演算性能で、VRAM容量そのものは「収まるか」を決める要素です。この分担を取り違えなければ、効かない場所への投資を避けられます。
優先順位をつけるなら、まず動かしたいモデルがVRAMに収まるかを確認し、収まらないならRAM容量を見直す。読み込みの待ち時間が気になるならSSDを検討する。この順番が現実的です。今回のASUS NUCやLexarの発表は、こうした優先順位が今後さらに一般的になっていくことを示す一例にすぎません。発表値そのものは実機の事実と分けて受け取り、自分の用途に照らして判断してください。
自分のボトルネック別・見直しどころ
ここまでの切り分けをふまえ、体感の遅さや不足に合わせて見直すなら、目安は以下のとおりです。優先度は「まず動かしたいモデルがVRAMに収まるか」を確認し、足りなければRAM、読み込みが気になるならSSD、の順。無理にすべてそろえる必要はありません。
| 気になっている症状 | 見直す場所 | 目安と探し方 |
|---|---|---|
| モデルの起動・切り替えが遅い | SSD(読み込み速度) | PCIe Gen4以上のNVMe → NVMe SSD 2TB(Gen4) |
| 大きいモデルがVRAMからあふれる | まずRAM(動かすための逃げ場) | DDR5大容量 → DDR5 64GB / 128GB |
| モデルは収まるが生成が遅い | GPU(VRAM帯域・演算性能) | 同じ16GBでも帯域・演算の高いGPUへ(例: RTX 5060 Ti 16GB≈448GB/s → RTX 5080≈960GB/s。容量16GBは同じ) → RTX 5060 Ti 16GB / RTX 5080 |
| モデルがVRAMに収まらない | VRAM容量/量子化/モデルサイズ(+RAM) | より容量の多いGPU・軽い量子化・小さいモデルを検討。RAMオフロードは「遅くても動かす」選択肢(16GB超は5080でも丸ごとは収まらない) |
| 画像・動画の出力が増えてきた | SSD(容量) | 2TB〜4TB+ → SSD 4TB |
よくある質問
Q. ローカルLLMにSSDの速さは関係ありますか?
モデルを読み込むときの待ち時間には関係します。数十GBの重みをストレージからメモリへ読み込む場面では、SSDが速いほど起動が短くなります。ただし、モデルがVRAMやRAMに収まっている通常の構成では、生成そのものの速度にはほとんど影響しません。生成中の主な計算がGPUとVRAMの間で行われるためです。ディスクオフロードやOSのスワップ(仮想メモリ)でSSDへの退避が起きている場合は例外で、このときはストレージも生成中の速度に絡んできます(あふれた分がRAMに留まるRAMオフロードで関与するのはRAMであって、ストレージではありません)。
Q. VRAMが足りないとき、RAMを増やせば動きますか?
動かせる場合があります。VRAMに収まらない分をシステムメモリへ逃がすRAMオフロードを使えば、容量の壁は回避できます。ただしVRAMで完結する場合より速度は落ちます。大型モデルを扱うなら64GBや128GBといった大容量メモリが現実的な備えになります。
Q. 小型AI PCのストレージ容量は何GBあれば足りますか?
LLM中心なら、基本的には使うモデルの本数で決まります。LLMやComfyUIのモデルは1本あたり数GBから数十GBなので、複数を使い分けるなら2TB以上が出発点として安心です。ただし、画像・動画生成では出力ファイルも蓄積していくため、モデル容量だけでなく「生成物をどれだけ保存するか」も含めて見積もる必要があります。容量はモデルの保管棚であり、性能とは別の問題と考えてください。
Q. Gen5 SSDにすると生成は速くなりますか?
通常の構成では生成は速くなりません。Gen5で広がるのは読み込みと書き込みの帯域で、効くのはモデルのロードやデータ供給の場面に限られます。テキストや画像の生成スピードは主にVRAM側で決まるため、ストレージ世代を上げても変わりません(VRAMにもRAMにも収まらずスワップしている場合は別で、まず容量を見直すのが先です)。
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