この記事の要点
メインメモリ96GiB の測定機では、FastH3 Omni は VRAM に入りきらない分をメインメモリ側に置き、テンプレートどおりの構成で、測ったどちらの GPU でも既定の長さの動画を最後まで生成できた。RTX 5080 では既定より長い動画も生成でき、長いほどメインメモリ側の使用が増えた。
Turbo LoRA から乗り換えて時間が縮むのは 1344×768 で作るときで、864×480 ではほぼ同じか少し長くなる。Turbo LoRA を使わない20ステップの元の MiniMax H3 からなら、どちらの解像度でも短くなった。
拡散モデルは既定の INT8 が基本で、VRAM のピークはほぼ同じまま、メインメモリ側の使用を抑えたいときに NVFP4 QAD を選ぶ。NVFP4 QAD は Blackwell 世代の GPU を前提にした拡散モデルだ。時間が縮んだのは OCuLink で接続した RTX 5060 Ti だけだった。同じ seed でも拡散モデルを替えると絵が途中から変わったので、自分の参照で INT8 と見比べてから替える。
FastH3 OmniはVRAM 16GBで動くか
メインメモリ96GiB の測定機で、テンプレートどおりの構成 (拡散モデル INT8・1376×768・5秒) を回すと、RTX 5080 と RTX 5060 Ti (OCuLink で接続) の両方とも動画を最後まで生成できた。モデルの読み込みが済んだ状態で続けて作った2本目にかかった時間は、RTX 5080 で96.6秒、RTX 5060 Ti で211.7秒だった。本体にあたる拡散モデル (ComfyUI の models/diffusion_models に置くファイル。以下、拡散モデル) は、それだけで、測ったどちらの GPU の VRAM よりも大きい。
それでも動くのは、ComfyUI の動的な読み込み (dynamic VRAM) によって、拡散モデルの必要な部分を順に GPU へ載せ、残りをメインメモリ側に置きながら回すからだ。生成中の VRAM の使用のピークは RTX 5080 で15,487MiB (15.12GiB) だった。その分メインメモリを使い、この構成でのシステム全体のメモリの使用のピークは RTX 5080 で52.5GiB、RTX 5060 Ti で44.9GiB だった (ComfyUI 以外の使用も含む)。RTX 5080 では、15秒の動画で59.7GiB、参照動画を足すと64.1GiB まで増えた。これらは測定機全体の値で、生成に要るメインメモリの量そのものではない。ほかのアプリの使用や OS の設定でも変わるので、自分の PC の空きと比べるだけでは、動くかどうかは決められない。メインメモリが96GiB より少ない PC では測っていない。
表では、モデルの読み込みを含む回を1本目、読み込みが済んだ同じ ComfyUI で seed を1つ進めて続けて生成した回を2本目と書く。測定は2026年10月29日に ComfyUI v0.43.0 で行い、どれも各1本ずつの値だ。時間の数え方と VRAM の読み方は「検証環境と測り方」にまとめた。
FastH3 Omni は FastVideo と Nuva Lab が共同で開発したモデルで、配布ページは、プロンプトと順番をつけた参照 (画像・動画・音声) から音声つきの動画を作ると説明している。元になった MiniMax H3 の導入手順と、同じ2枚の GPU での実測はMiniMax H3をVRAM 16GBで動かすで扱っていて、この記事は、そこから FastH3 Omni に乗り換えるかどうかを時間とメモリの実測で比べる。
FastH3 Omniとは: MiniMax H3を8ステップに縮めた参照つき動画生成
この記事で単に「配布ページ」と書くときは、Hugging Face の FastVideo/FastH3-Omni-Comfy (revision 82eff2a6) を指す。
元のMiniMax H3との関係
ComfyUI のテンプレートに埋め込まれた注記は、FastH3 Omni を、MiniMax H3 の上に作った参照つき動画生成のモデルで、8ステップで映像と音声を作れるように蒸留した生徒モデル (distilled student) だと説明している。少ないステップ数で生成するために学習させた蒸留モデル、という位置づけになる。
元の MiniMax H3 の ComfyUI 公式テンプレート (video_minimax_h3_r2v) はステップ数20で、サンプラーは res_multistep、スケジューラは simple。これとは別に、4ステップで生成する Turbo LoRA が Comfy-Org/MiniMax-H3 で配布されていて、テンプレートには Turbo LoRA の切り替えがある (既定は off)。テンプレートの中身は、計測に使ったファイルで確かめた。この記事では、20ステップのテンプレートのままの構成を「元の MiniMax H3」、それに4ステップの Turbo LoRA を当てた構成を「Turbo LoRA」と呼ぶ。
ステップ数とガイダンス
配布ページの推奨は8ステップ・ガイダンス1.0で、映像の shift は12.0、音声の shift は3.0。ComfyUI のテンプレートも8ステップで、サンプラーは euler、スケジューラは simple、ガイダンスをかけない BasicGuider の構成だった (計測に使ったテンプレートの中身で確認)。
参照の渡し方と上限
配布ページによると、参照はプロンプトの中で <Picture 1> <Video 1> <Audio 1> のように番号をつけて名指しして使う。後の節で参照を足したときも、プロンプトの末尾に名指しの1文を加えている。
テンプレートの注記では、参照画像は9枚まで、参照動画と参照音声はそれぞれ3本まで渡せる。テンプレートの注記は画像2枚 (Picture 1 と Picture 2) をつないでいると書いているが、計測に使ったテンプレートのファイルで最初からつながっていた参照は画像1枚 (yellow_plane_ref.png、ノードでは ref_image_0) だけだった。上限まで渡して測ってはいない。
ライセンス
配布ページのライセンスの節は、FastH3 Omni の重みの利用は、元の MiniMax H3 と同じ MiniMax-H3 Community License Agreement に従うと書いている。リンク先は MiniMaxAI/MiniMax-H3 の LICENSE だ。
その条文 (Hugging Face の MiniMaxAI/MiniMax-H3、revision 42ed227e) は、適用する地域 (Applicable Territory) を、欧州連合・英国・韓国・米国を除いた全世界と定めている。適用する地域の外、つまり欧州連合・英国・韓国・米国では、モデルなどの利用だけでなく、生成した出力や結果を使う・複製する・配布する・表示することも認めていない (Section V.4)。商用の製品やサービスの年間売上が2,000万米ドルを超える場合は MiniMax の事前の書面による許可が要るとし、MiniMax H3 を使う商用の製品やサービスでは、画面に「MiniMax H3」と目立つように表示する義務を定めている。生成した出力について MiniMax は権利を主張せず、出力の責任は利用者が負う、とも書かれている。このほか条文には、MiniMax H3 の成果物やその出力・結果を使って、MiniMax H3 自身とその派生モデル (Model Derivatives) 以外の AI モデルを改良することを認めない条項 (Section V.3) と、機械生成物であることをはっきり示さずに公開することなどを禁じる利用規定 (Acceptable Use Policy、Exhibit A) もある。モデルを第三者に配布するときは、条文の写しを渡して NOTICE ファイルを添えることを求めている (Section III)。出力を生成できる製品やサービスを第三者に提供するときは、Section V (利用の制限) や利用規定に反する使われ方を防ぐ仕組みを用意することも定めている (Section V.5)。ここでは条文の一部を紹介するだけで、特定の国や用途で使ってよいかどうかは判断しない。公開や商用で使う前には、条文全体を読む必要がある。
そろえるファイルとテンプレートの設定
ComfyUIのバージョンとテンプレート
測定に使ったのは、2026年10月27日に公開された ComfyUI v0.43.0 だ。このバージョンの requirements.txt はテンプレートのパッケージ comfyui-workflow-templates 0.11.97 を指定していて、FastH3 Omni の公式テンプレート video_fasth3_ominiref_r2v はこのパッケージに入っている。計測に使った環境で、パッケージの中のテンプレートが Comfy-Org/workflow_templates の commit 1524172f のファイルとバイト単位で同じことも確かめた。
置くファイル
テンプレートが読み込むのは、拡散モデル fasth3_omniref_8step_pruned_int8_convrot (20.69GiB)、テキストエンコーダ qwen3vl_32b_minimax_h3_nvfp4_awq (14.61GiB)、映像の VAE minimax_h3_video_vae_int8_convrot (2.62GiB)、音声の VAE minimax_h3_audio_vae_fp32 (0.56GiB) の4つ。拡散モデルだけで、GPU の VRAM (RTX 5080 は15.92GiB) より大きい。
サイズは手元のファイルのバイト数を GiB に直した値 (1GiB = 1,073,741,824 バイト) で、配布元の表示の GB は10進なので数字が違って見える。GPU の VRAM は nvidia-smi が示す総量で、RTX 5080 は16,303MiB、RTX 5060 Ti は16,311MiB。テキストエンコーダと VAE は元の MiniMax H3 の配布と同じファイルで、sha256 が一致した。元の MiniMax H3 を動かしている環境に、表1 と同じテキストエンコーダと2つの VAE がそろっていれば、足すのは拡散モデルだけになる。
テンプレートが読み込むテキストエンコーダは NVFP4 AWQ 形式で、配布ページは、NVFP4 での高速なテキストエンコードには Blackwell 世代の GPU が要り、ほかの GPU では BF16 か INT8 のテキストエンコーダを選ぶよう書いている。BF16 と INT8 のテキストエンコーダも同じ配布ページにある。測った2枚はどちらも Blackwell 世代で、ほかの世代の GPU では測っていない。
表1 は、この記事の計測で使ったファイルの置き場所と大きさの一覧で、比べるために使った NVFP4 QAD・FP8 の拡散モデルと、元の MiniMax H3・Turbo LoRA のファイルも含む。BF16 の拡散モデル (41.20GiB) は測っていないので載せていない。
表1 測定に使ったファイル
| 役割 | ファイル | サイズ | 置き場所 |
|---|---|---|---|
| 拡散モデル INT8 (テンプレートの既定) | fasth3_omniref_8step_pruned_int8_convrot.safetensors | 20.69GiB | models/diffusion_models |
| 拡散モデル NVFP4 QAD | fasth3_omniref_qad_nvfp4_comfy.safetensors | 12.83GiB | models/diffusion_models |
| 拡散モデル FP8 | fasth3_omniref_fp8_comfy.safetensors | 21.46GiB | models/diffusion_models |
| テキストエンコーダ | qwen3vl_32b_minimax_h3_nvfp4_awq.safetensors | 14.61GiB | models/text_encoders |
| 映像の VAE | minimax_h3_video_vae_int8_convrot.safetensors | 2.62GiB | models/vae |
| 音声の VAE | minimax_h3_audio_vae_fp32.safetensors | 0.56GiB | models/vae |
| 比較用: 元の MiniMax H3 の拡散モデル | minimax_h3_ref2va_pruned_int8_convrot.safetensors | 19.53GiB | models/diffusion_models |
| 比較用: Turbo LoRA | minimax_h3_ref2v_turbo_4step_v0.1_comfyui_bf16.safetensors | 1.82GiB | models/loras |
FastH3 Omni だけを使うなら、表1 のうち拡散モデル1つとテキストエンコーダ・2つの VAE の4ファイルがあれば足りる。比較用の2行は、元の MiniMax H3 と Turbo LoRA で回すときにだけ要る。
テンプレートの既定の設定
テンプレートの既定は、解像度の選び方が16:9・1.0メガピクセル・32の倍数、長さ5秒 (124フレーム)、8ステップ、参照画像1枚。2026年10月28日・29日に RTX 5080 と RTX 5060 Ti でテンプレートのまま回した出力を数えると、1376×768・124フレーム・24fps・音声32kHz だった。この記事で書く「5秒」は、テンプレートの長さの設定の値で、実際の出力は124フレームなので、24fps で再生すると約5.17秒になる。表の5秒・10秒・15秒も同じく設定した長さで、出力はそれぞれ124・243・362フレームだった。
一方、テンプレートの注記とノードの既定値は 1344×768 と書いている。ここでのメガピクセルは ComfyUI のノードの単位で、1メガピクセルは1024×1024 (1,048,576 画素) にあたる。この単位で 1344×768 は約0.98メガピクセルで、1.0メガピクセルを32の倍数に丸めると 1376×768 になる。この記事では、テンプレートのまま回した結果を 1376×768、元の MiniMax H3 と解像度をそろえた比較を 1344×768 と書き分ける。
長さについては、テンプレートの注記が、約5秒にしているのは VRAM の少ない一部の GPU でメモリ不足 (OOM) を避けるためだと書いている。
元のMiniMax H3・Turbo LoRAと比べた速さ
プロンプト・参照画像1枚・seed を FastH3 Omni のテンプレートのものにそろえ、元の MiniMax H3 (20ステップ・res_multistep)、Turbo LoRA (4ステップ)、FastH3 Omni (8ステップ・euler) を比べた。Turbo LoRA はテンプレートの切り替えで有効にし、ステップ数・サンプラー・スケジューラ・注意機構は、それぞれのテンプレートのままにしている。解像度は 1344×768 と 864×480 の2通りで、FastH3 Omni の 1344×768 はメガピクセルを0.98にして合わせた。値は各1本で、RTX 5060 Ti は OCuLink で接続している。表のサンプリングは、ComfyUI がサンプラーのノードを実行していた時間を指す。
ここでの Turbo LoRA は、Comfy-Org/MiniMax-H3 が配布する minimax_h3_ref2v_turbo_4step_v0.1_comfyui_bf16 (表1、models/loras に置く) で、4ステップで回した。有志が配布する別の Turbo LoRA (step600 EMA) は、別の記事「MiniMax H3 Turbo LoRA(step600 EMA)とは」で扱っていて、配布元もファイルも違う。
1344×768ではFastH3 Omniが最も短い
表2 は、1344×768・5秒 (124フレーム) で3つの構成の時間を並べたもの。
表2 1344×768・5秒の時間
| 条件 | ステップ数 | 1本目 | 2本目 | サンプリング (2本目) |
|---|---|---|---|---|
| RTX 5080・元のMiniMax H3 | 20 | 525.8秒 | 513.5秒 | 487.3秒 |
| RTX 5080・Turbo LoRA | 4 | 140.4秒 | 125.9秒 | 99.9秒 |
| RTX 5080・FastH3 Omni | 8 | 113.6秒 | 94.2秒 | 71.0秒 |
| RTX 5060 Ti・元のMiniMax H3 | 20 | 1277.4秒 | 1252.9秒 | 1222.7秒 |
| RTX 5060 Ti・Turbo LoRA | 4 | 304.2秒 | 289.7秒 | 249.0秒 |
| RTX 5060 Ti・FastH3 Omni | 8 | 240.3秒 | 222.1秒 | 181.2秒 |
表2 と図からは、どちらの GPU でも FastH3 Omni が3つの中で最も短かったことが読み取れる。RTX 5080 の2本目では FastH3 Omni が94.2秒、Turbo LoRA が125.9秒で、ステップ数は FastH3 Omni のほうが多いのに短く終わっている。
864×480ではTurbo LoRAとほぼ同じか少し長い
解像度を元の MiniMax H3 のテンプレートの既定 (864×480、0.4メガピクセル) に下げると、RTX 5080 では FastH3 Omni と Turbo LoRA の順位が入れ替わり、RTX 5060 Ti ではほぼ並ぶ。表3 は、表2 と同じ条件で解像度だけを 864×480 にしたもの。
表3 864×480・5秒の時間
| 条件 | ステップ数 | 1本目 | 2本目 | サンプリング (2本目) |
|---|---|---|---|---|
| RTX 5080・元のMiniMax H3 | 20 | 136.8秒 | 125.9秒 | 108.1秒 |
| RTX 5080・Turbo LoRA | 4 | 53.3秒 | 37.4秒 | 23.5秒 |
| RTX 5080・FastH3 Omni | 8 | 64.1秒 | 45.4秒 | 27.9秒 |
| RTX 5060 Ti・元のMiniMax H3 | 20 | 319.6秒 | 300.7秒 | 283.5秒 |
| RTX 5060 Ti・Turbo LoRA | 4 | 95.8秒 | 82.0秒 | 59.5秒 |
| RTX 5060 Ti・FastH3 Omni | 8 | 105.8秒 | 83.8秒 | 68.1秒 |
RTX 5080 の2本目は FastH3 Omni が45.4秒、Turbo LoRA が37.4秒で、Turbo LoRA のほうが短い。RTX 5060 Ti では2本目の差はわずかで、この解像度では FastH3 Omni は Turbo LoRA より少し長いかほぼ同じだった。
864×480では、注意機構の設定をそろえると元のモデルと1ステップの時間がほぼ同じになった
注意機構 (attention) は、動画のある部分を計算するときに、ほかのどの部分をどれだけ参照するかを決める処理だ。FastH3 Omni のテンプレートは、注意を計算する組み合わせを絞る VSA をかけていて、VSA を使わない計算で使う通常の注意機構には comfy kitchen attention を選んでいる。ComfyUI v0.43.0 の Model Attention Backend ノードの説明では、comfy kitchen attention は INT8 に量子化した注意機構で、NVIDIA と AMD の GPU だけで使える。このノードは実験的 (experimental) の扱いだ。
VSA (Video Sparse Attention) は、ComfyUI v0.43.0 の Model Sparse Attention (BlockSparseAttention) ノードの説明によると、動画を立方体の区画に分けて、注意を計算する組み合わせを絞る方式で、FastH3 の重みが要る。同じ説明は、速くなる幅は列が長いほど大きく、短い列は絞らないほうが速いことが多いとしている。テンプレートの設定は keep 10% で、サンプリングの始めから終わりまで (start 0・end 1) を対象にしている。ノードの説明によると、トークン数が min_tokens (テンプレートでは12288) に満たない計算は、VSA を使わず通常の注意機構で回る。
表4 は、RTX 5080 の2本目で、注意機構と VSA の設定ごとに1ステップの時間を比べたもの。1ステップの時間は ComfyUI のログの進捗表示 (s/it) の値だ。表の「VSA の設定」は、VSA をかける設定にしたかどうかを表す。計算の中で VSA が実際に使われたかは、ノードの詳しいログを出さない設定のまま測ったため、ログでは確かめていない。ただ、864×480・5秒でも動画の部分だけで約1万5千トークンあり、min_tokens (12288) より多いので、トークン数については VSA が使われる条件を満たしている。元の MiniMax H3 のテンプレートは注意機構を切り替えるノードを持たないため、ComfyUI の起動時の既定 (pytorch attention) で動いている。
表4 注意機構と1ステップの時間 (RTX 5080・5秒)
| モデルと解像度 | 注意機構 | VSA の設定 | 1ステップ |
|---|---|---|---|
| 元のMiniMax H3・864×480 | pytorch attention | なし | 5.36秒 |
| FastH3 Omni・864×480 | pytorch attention | なし | 5.38秒 |
| FastH3 Omni・864×480 | comfy kitchen attention (テンプレートの設定) | あり (テンプレートの設定) | 3.27秒 |
| 元のMiniMax H3・1344×768 | pytorch attention | なし | 24.32秒 |
| FastH3 Omni・1376×768 | comfy kitchen attention (テンプレートの設定) | なし | 12.6秒 |
| FastH3 Omni・1376×768 | comfy kitchen attention (テンプレートの設定) | あり (テンプレートの設定) | 8.97秒 |
864×480 で FastH3 Omni を元の MiniMax H3 と同じ注意機構 (pytorch attention・VSA なし) にすると、1ステップは5.38秒で、元の MiniMax H3 の5.36秒とほぼ同じだった。テンプレートの設定 (comfy kitchen attention と VSA) に戻すと3.27秒になる。この解像度の RTX 5080 では、注意機構の設定をそろえると1ステップの差はほぼ無くなったので、FastH3 Omni の1ステップの短さは、テンプレートの注意機構の設定によるものと読める。ここで比べた値はどれも各1本で、差の要因をすべて切り分けたわけではない。
1376×768 では、VSA だけを外すと12.6秒、テンプレートの設定で8.97秒で、元の MiniMax H3 の 1344×768 は24.32秒だった。1376×768 の FastH3 Omni を pytorch attention にした組み合わせと、元の MiniMax H3 に comfy kitchen attention を付けた組み合わせは測っていないため、この解像度で残る差がどこから来るかは切り分けていない。
FastH3 Omni のテンプレートには comfy kitchen attention と VSA の設定が最初から入っているので、テンプレートのまま使えば自分で付け足す必要はない。VSA はノードの説明で FastH3 の重みが要るとされていて、元の MiniMax H3 や Turbo LoRA の構成に足したときは測っていない。
元の MiniMax H3 のまま時間を縮める方法として、ComfyUI 0.44.0 の latent upscaler・context windows・映像VAEの差し替えを RTX 5080 で測った結果はMiniMax H3をVRAM 16GBで速くする|latent upscaler・context windows・軽いVAEはどれを使うかにまとめた。
INT8・NVFP4・FP8のどれを選ぶか
3つの拡散モデルの成り立ち
INT8・FP8・NVFP4 は、拡散モデルの重みをどんな数値の形で持つかを表す量子化の形式の名前で、同じモデルでも形式によってファイルの大きさが変わる。NVFP4 QAD は、NVFP4 で動かす前提で一部の重みを学習し直したもので、表5 の後で説明する。
テンプレートの注記は、このモデルの拡散モデルとして INT8 (convrot) と BF16 の2つのファイルが公開されていて、テンプレートは INT8 を使うと書いている。注記にある 22.2GB・44.2GB は10進の GB で、手元の INT8 のファイルは20.69GiB だった。これとは別に NVFP4 QAD と FP8 の拡散モデルも配布されていて、表5 は3つの成り立ちを配布元の記載で並べたもの。
表5 3つの拡散モデルの成り立ち
| 拡散モデル | 元になった重み (配布元の記載) | 手元のファイルの大きさ |
|---|---|---|
| INT8 (convrot・テンプレートの既定) | FastH3 Omni の拡散モデルとして公開された2つのファイル (INT8 と BF16) のうちの INT8 | 20.69GiB |
| FP8 | 元の FastH3 Omni の BF16 の重みから量子化し直したもの | 21.46GiB |
| NVFP4 QAD | 元の FastH3 Omni に QAD をかけた BF16 の重みを量子化し直したもの。配布元の記録では、量子化する前の BF16 の重みのうち、元の FastH3 Omni と違うのは学習し直した注意機構と MLP の射影の重みだけで、残りの重みはバイト単位で同じ | 12.83GiB |
INT8 と FP8 は元の FastH3 Omni の重みを別の形式で持ったもので、NVFP4 QAD だけが一部の重みの違うモデルになる。QAD は量子化を意識した蒸留 (quantization-aware distillation) のことで、FastVideo 形式の配布ページ (FastVideo/FastH3-Omni-NVFP4-QAD、旧称 FastH3-OmniRef-NVFP4-QAD、revision f01e6a23) は、NVFP4 で動かすことを前提にモデルを最適化するものだと説明している。NVFP4 QAD と FP8 の成り立ちは、それぞれの変換の記録 (provenance/CONVERSION.md) の記載による。
NVFP4 QAD の配布ページ (revision 36dbf15c) は、NVFP4 を速く動かすには NVIDIA の Blackwell 世代の GPU が要り、ほかの世代の GPU では BF16 か FP8 を使うよう書いている。測った RTX 5080 と RTX 5060 Ti はどちらも GeForce RTX 50 シリーズ (Blackwell 世代) で、ほかの世代の GPU では測っていない。また NVFP4 QAD と FP8 の配布ページはどちらも、量子化した出力は BF16 の出力と違うことがあると書いている。この記事では画質を測っていない。
時間とメモリ
表6 は、1376×768・5秒のテンプレートの設定で拡散モデルだけを替えた結果で、値は各1本。共有GPUメモリは Windows のタスクマネージャーやパフォーマンスカウンタに出る項目名で、GPU が使っているメインメモリの量を表す。表の値は、パフォーマンスカウンタの GPU Adapter Memory の Shared Usage を、測った GPU 全体について読んだピークで、ほかのプロセスの分も含む。このうちどれだけが、VRAM に入りきらないモデルの重みの分かは切り分けていない。プロセスのコミットは、ComfyUI とその子プロセスが確保したメモリ (プライベートコミット) の合計のピークで、物理メモリに載っている量とは違う。メモリの列は2本のうち大きいほうで、VRAM のピークは nvidia-smi の値なので、ほかのプロセスの分を含む。2本目では、プロンプトの文字のエンコードは ComfyUI が1本目の結果を使い回して走り直さないため、1本にかかった時間とサンプリングの差は、ほぼ VAE の復号と動画の保存にかかった分にあたる。
表6 拡散モデルごとの時間とメモリ (1376×768・5秒)
| GPU | 拡散モデル | 1本目 | 2本目 | サンプリング (2本目) | VRAMのピーク | 共有GPUメモリのピーク | プロセスのコミットのピーク |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| RTX 5080 | INT8 (20.69GiB・テンプレートの既定) | 122.3秒 | 96.6秒 | 74.8秒 | 15,487MiB | 16,464MiB | 36.6GiB |
| RTX 5080 | NVFP4 QAD (12.83GiB) | 123.5秒 | 103.4秒 | 72.9秒 | 15,493MiB | 9,266MiB | 30.6GiB |
| RTX 5080 | FP8 (21.46GiB) | 145.0秒 | 126.2秒 | 100.6秒 | 15,464MiB | 18,136MiB | 38.1GiB |
| RTX 5060 Ti | INT8 (20.69GiB・テンプレートの既定) | 238.9秒 | 211.7秒 | 181.1秒 | 14,908MiB | 13,776MiB | 35.0GiB |
| RTX 5060 Ti | NVFP4 QAD (12.83GiB) | 203.9秒 | 173.7秒 | 143.3秒 | 14,926MiB | 6,938MiB | 29.7GiB |
サンプリングの列では、RTX 5080 の NVFP4 QAD と INT8 はほぼ同じで、RTX 5060 Ti では NVFP4 QAD のほうがはっきり短い。1本にかかった時間で比べると、RTX 5080 の2本目では INT8 のほうがわずかに短かった。ノードごとの時間を見ると、この2本目のサンプリングは NVFP4 QAD のほうが約1.9秒短く、動画の保存 (SaveVideo) は逆に約8.5秒長かった。つまり、1本の時間の差は保存の時間の差から来ている。各1本の値なので、この差がいつも出るかは確かめていない。FP8 は RTX 5080 で、時間の列も共有GPUメモリとプロセスのコミットの列も3つの中で最も大きい。RTX 5060 Ti の FP8 は測っていない。
VRAM のピークはどの拡散モデルでも同じくらいで、差が出たのは共有GPUメモリとプロセスのコミットの列だった。ファイルが12.83GiB と小さい NVFP4 QAD は、どちらの GPU でも INT8 よりこの2つの列が少なく、FP8 を測った RTX 5080 では FP8 よりも少ない。
同じseedで並べた絵の違い
RTX 5080 の1本目 (seed 771204598) を、拡散モデルごとに4枚の静止フレームで見比べた。最初のフレーム (参照画像に近い構図) は3つともほぼ同じで、途中からの動き方とカメラの寄り方が違った。NVFP4 QAD の1本目では、参照画像に無い文字が主翼に描かれた。見比べたのは静止フレームだけで、画質も音質も採点していない。1つの seed での観察なので、NVFP4 QAD がいつも文字を描き足すとは言えない。
INT8 と FP8 は同じ元の重みを別の形式で持ったものだが、この2つの間でも絵は途中から違った。NVFP4 QAD は形式に加えて一部の重みも違うが、絵の違いが形式と重みのどちらから来るかは切り分けていない。画質は採点していないので、NVFP4 QAD を試すなら、自分の参照画像とプロンプトで INT8 と並べて確かめてから切り替えることになる。
GPUごとの選び方
まず、手持ちの GPU が Blackwell 世代かどうかで分かれる。上に書いたとおり、NVFP4 QAD の配布ページは、ほかの世代の GPU では BF16 か FP8 を使うよう書いている。
OCuLink で接続した RTX 5060 Ti では、NVFP4 QAD が INT8 より1本の時間もサンプリングも短く、共有GPUメモリとプロセスのコミットも少なかった。この GPU で時間を縮めたい場合、NVFP4 QAD が候補になる。PCIe のスロットに直接挿した RTX 5060 Ti や、ほかの VRAM 16GB の GPU でも同じになるかは測っていない。RTX 5080 ではサンプリングは INT8 とほぼ同じで、1本の時間はむしろ少し長く、VRAM のピークも変わらないので、NVFP4 QAD を選ぶ理由は共有GPUメモリとプロセスのコミットが少ないことになる。
NVFP4 QAD は INT8 と形式も一部の重みも違い、RTX 5080 で見比べた1つの seed では絵が途中から変わった。迷ったらテンプレートの既定の INT8 のままでよい。INT8 は元の FastH3 Omni の重みを INT8 の形式で持ったものだ。FP8 は、測った RTX 5080 では、時間・共有GPUメモリ・プロセスのコミットのどれでも INT8 より大きく、FP8 を選ぶ理由になる結果は出なかった。
何秒の動画まで作れるか: 長さとVSA
RTX 5080 では、1376×768 の10秒 (243フレーム) と15秒 (362フレーム) も最後まで生成できた。2本目の時間は10秒が216.1秒、15秒が379.9秒で、RTX 5060 Ti の10秒は431.2秒だった。RTX 5060 Ti の15秒は測っていない。
表7 は、テンプレートの設定 (INT8・VSA をかける) から長さと VSA の設定だけを替えた結果で、値は各1本。「VSA の設定」の列は、VSA をかける設定にしたかどうかを表す。メモリの列は、2本のうち大きいほうの値を載せた。システム全体の使用は、OS が示す物理メモリの総量から、まだ使える量を引いた値で、ComfyUI 以外も含む。RTX 5060 Ti の VSA なしも測っていない。
表7 長さと VSA の設定 (1376×768)
| GPU | 長さ | VSA の設定 | 1本目 | 2本目 | サンプリング (2本目) | VRAMのピーク | 共有GPUメモリのピーク | プロセスのコミットのピーク | システム全体の使用のピーク |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| RTX 5080 | 5秒 (124フレーム) | あり | 122.3秒 | 96.6秒 | 74.8秒 | 15,487MiB | 16,464MiB | 36.6GiB | 52.5GiB |
| RTX 5080 | 5秒 (124フレーム) | なし | 137.7秒 | 126.8秒 | 101.6秒 | 15,487MiB | 14,585MiB | 35.0GiB | 48.5GiB |
| RTX 5080 | 10秒 (243フレーム) | あり | 224.4秒 | 216.1秒 | 151.7秒 | 15,470MiB | 21,063MiB | 41.5GiB | 56.7GiB |
| RTX 5080 | 15秒 (362フレーム) | あり | 389.8秒 | 379.9秒 | 304.1秒 | 15,743MiB | 27,398MiB | 48.0GiB | 59.7GiB |
| RTX 5080 | 15秒 (362フレーム) | なし | 698.2秒 | 673.5秒 | 604.9秒 | 15,766MiB | 25,205MiB | 45.9GiB | 58.6GiB |
| RTX 5060 Ti | 5秒 (124フレーム) | あり | 238.9秒 | 211.7秒 | 181.1秒 | 14,908MiB | 13,776MiB | 35.0GiB | 44.9GiB |
| RTX 5060 Ti | 10秒 (243フレーム) | あり | 446.8秒 | 431.2秒 | 366.1秒 | 14,904MiB | 19,219MiB | 40.4GiB | 54.7GiB |
VSAを外すとどれだけ延びるか
テンプレートの注記は、1344×768・362フレーム (15秒) では VSA が INT8 の注意機構より約2倍速く、短く小さい動画ではほとんど速くならないと書いている。この INT8 の注意機構はテンプレートが選ぶ comfy kitchen attention のことで、拡散モデルの INT8 とは別のものだ。
RTX 5080 で VSA を外すと (注意機構は comfy kitchen attention のまま)、2本目のサンプリングは5秒で74.8秒から101.6秒 (約1.36倍)、15秒で304.1秒から604.9秒 (約1.99倍) に延びた。15秒での差は注記の約2倍に近く、5秒のときより大きい。手元の解像度は 1376×768 で、注記の 1344×768 より画素が約2.4%多い。
長くすると増えるメモリ
表7 で長さとともに増えたのは、共有GPUメモリ・プロセスのコミット・システム全体の使用の3つの列で、RTX 5080 の15秒ではどれも表の中で最も大きい。VRAM のピークの列は、15秒でも5秒とほぼ変わらない。どれもメインメモリ96GiB の測定機での値で、長い動画ほどメインメモリ側の使用が増える形になる。
参照を増やすとどれだけ重くなるか
参照動画を1本足したときだけ、サンプリングが大きく延びた。表8 は、RTX 5080 でテンプレートの設定 (INT8・VSA あり・1376×768・5秒) のまま、参照と、足した参照を名指しするプロンプトの末尾の1文だけを替えた結果で、値は各1本。メモリの列は2本のうち大きいほうを載せた。
表8 参照の種類と数 (RTX 5080・1376×768・5秒)
| 参照 | 1本目 | 2本目 | サンプリング (2本目) | 共有GPUメモリのピーク | プロセスのコミットのピーク | システム全体の使用のピーク |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 画像1枚 (テンプレートの既定) | 122.3秒 | 96.6秒 | 74.8秒 | 16,464MiB | 36.6GiB | 52.5GiB |
| 画像2枚 | 123.9秒 | 107.2秒 | 83.1秒 | 16,002MiB | 36.9GiB | 50.2GiB |
| 画像3枚 | 136.4秒 | 119.2秒 | 94.9秒 | 16,980MiB | 37.9GiB | 51.8GiB |
| 画像1枚 + 動画1本 (映像と音声の両方を参照にした) | 454.5秒 | 402.1秒 | 379.6秒 | 28,244MiB | 51.0GiB | 64.1GiB |
| 画像1枚 + 音声1本 | 110.1秒 | 95.3秒 | 73.5秒 | 14,692MiB | 35.8GiB | 49.5GiB |
| 画像1枚・ref_image_size=max | 107.9秒 | 96.7秒 | 72.7秒 | 14,870MiB | 35.8GiB | 49.9GiB |
参照画像を2枚・3枚にする
参照画像を2枚・3枚にすると、2本目のサンプリングは1枚の74.8秒から83.1秒・94.9秒に延びた。足した画像は公式テンプレートの入力画像2枚で、プロンプトの末尾に <Picture 2> and later pictures are additional style references for <Subject 1> and <Subject 2>. の1文を足した。1枚足すごとの延びは、表8 の参照動画の行と比べると小さい。
参照動画と参照音声
参照動画を1本 (5秒・音声つき) 足し、映像と音声の両方を参照としてつなぐと、2本目のサンプリングは379.6秒で、参照画像1枚だけのときの約5倍になった。プロセスのコミットのピークは51.0GiB、システム全体の使用のピークは64.1GiB で、表8 の中で最も大きい。参照動画には、テンプレートのまま回した FastH3 Omni の出力 (1376×768・124フレーム・音声つき) を使い、プロンプトの末尾に Use <Video 1> as the camera-motion reference. を足した。なぜここまで遅くなるのかは切り分けていない。
参照音声を1本足しても、2本目のサンプリングは73.5秒で、参照画像1枚だけのとき (74.8秒) と変わらなかった。参照音声は参照動画と同じファイルの音声で、プロンプトの末尾に Use <Audio 1> as the soundtrack reference. を足した。
ref_image_sizeのmatchとmax
ComfyUI v0.43.0 のノードの説明では、ref_image_size の match は参照画像を生成の画素数まで、max は短い辺2048ピクセルまで縮める設定で、どちらも説明の上では縮めるだけで拡大はしない。実際の処理は、縮めたあとに縦横を32の倍数に丸めるので、元の大きさによってはわずかに大きくなることがある。参照のトークンはサンプリングのすべてのステップを通るため、max は数倍遅くなりうる、とも書かれている。
今回の参照画像 (896×1152) では、match から max に変えても、RTX 5080 の1本目・2本目とも、出力がテンプレートどおりの回と一致した (MP4 のデータ部分の sha256 で比べた)。一致したのは、この大きさの画像がどちらの設定でも縮小されないためだ。大きい参照画像で max にしたときの時間は測っていない。
メインメモリと共有GPUメモリの使い方
ComfyUI は VRAM に入りきらないモデルの重みをメインメモリ側に置く。共有GPUメモリの値のうち、どれだけがその重みの分かは切り分けていない。起動ログには pinned memory (OS がディスクへ書き出す対象から外して固定するメインメモリ) を39,229MiB 有効にした旨の行が出ているが、これは固定に使えるメモリの上限 (ComfyUI のコードでは、Windows でメインメモリの40%) で、実際に固定した量ではない。共有GPUメモリのピークは条件によって6,938MiB から28,244MiB まで変わり、表6〜表8 の共有GPUメモリの列を見ると、小さい拡散モデル (NVFP4 QAD) で少なく、長い動画と参照動画で多い。
プロセスのコミットのピークは、5秒の通常の構成なら表6 の列の幅に収まり、表7 の15秒と表8 の参照動画の行で大きくなった。システム全体の使用のピークは最大で64.1GiB だった。どれもメインメモリ96GiB の測定機だけで測った値で、メインメモリが少ない PC で動くかどうかは測っていない。
dynamic VRAM に関わる ComfyUI の起動オプションはComfyUIの起動オプション実測ガイドで扱っている。
検証環境と測り方
測定機は RTX 5080 (16GB・PCIe x16) と RTX 5060 Ti (16GB・OCuLink で接続) を載せた Windows の PC で、メインメモリは96GiB、NVIDIA のドライバは610.88。ソフトウェアは ComfyUI v0.43.0・PyTorch 2.14.0+cu130・comfy-kitchen 0.2.40・comfy-aimdo 0.6.0 で、各条件を GPU を1枚ずつ使って順に回した。RTX 5080 は画面表示も担当していて、各条件の1本目を回す前の VRAM の使用は799〜1,929MiB、RTX 5060 Ti は114MiB だった。測定機の詳しい構成は検証環境のページにまとめてある。
1つの条件ごとに ComfyUI を起動し直し、2本ずつ生成した。1本目はモデルの読み込みを含み (seed 771204598)、2本目は同じ ComfyUI の中で seed を1つ進めた (771204599)。表の値はどれも各1本の値で、複数本をならした値ではない。1本にかかった時間は ComfyUI に送った処理の実行開始と成功の知らせの時刻の差、サンプリングはサンプラーのノードの実行時間で、2026年10月29日 05:14〜09:25 に続けて測った。1本目と2本目のサンプリングの差は、多くの条件で1割以内だった。
1本目の読み込みが、ディスクから初めて読んだものか、OS のファイルキャッシュに残っていた分を使ったものかは、条件ごとには確かめていない。1本目の時間は、その状態で変わりうる。前日 (2026年10月28日) に起動し直した ComfyUI で1本だけ回した予備の測定 (RTX 5080・テンプレートどおり) は、回す前に拡散モデルのファイルを一度全部読んでいて、1本にかかった時間が96.2秒だった。本番の1本目 (122.3秒) より短く、2本目 (96.6秒) に近かったが、1本ずつの比較なので、この差がファイルキャッシュによるものかは切り分けていない。
VRAM の使用のピークは nvidia-smi を0.5秒おきに読んだ最大で、画面表示も担当している RTX 5080 では、ほかのプロセスの分も含む。共有GPUメモリは1秒おき、プロセスのコミットとシステム全体の使用は0.25秒おきに読んだ最大で、その間の短い山は取りこぼしうる。メモリの列は列ごとに2本のうち大きいほうを選んでいるので、同じ時刻の値とは限らず、足し合わせても要るメモリの量にはならない。拡散モデルが dynamic VRAM で読み込まれたことは、ComfyUI のログに MiniMaxH3 のモデル 21,140MB (ログの表記のまま) を dynamic VRAM loading で準備した旨の行が出ていることで確かめた。
出力は、MP4 のデータ部分 (最初の mdat ボックス) の sha256 で比べた。RTX 5080 でテンプレートどおりの回と ref_image_size=max の回を比べると、同じ seed どうしで一致した。ただし、これは縮小がかからない参照画像で2つの設定を比べた結果で、同じ GPU と seed ならいつでも一致するとは確かめていない。RTX 5080 の出力と RTX 5060 Ti の出力は、同じ seed でも一致しなかった。
表の実測値は2026年10月29日に、上記の測定機・設定で計測したもの。本文で触れた96.2秒の予備の測定だけは、前日の10月28日の値だ。ほかの GPU やモデルの実測はAIハードウェア実測データベースから探せる。
測っていないこと
試す前に気にしやすい順に並べると、次の項目はこの記事の測定に含まれていない。
- VRAM 12GB・8GB の GPU。測ったのは VRAM 16GB の2枚だけ
- RTX 50 シリーズ以外の GPU
- メインメモリが96GiB 未満の PC
- RTX 5060 Ti を OCuLink 以外 (PCIe のスロットに直接挿すなど) でつないだとき
- 15秒を超える長さ
- 画質と音質の採点。音は、無音でないことを数値で確かめただけ
- BF16 の拡散モデル (41.20GiB)
- RTX 5060 Ti の FP8、15秒、VSA なし
- 大きい参照画像での
ref_image_size=max - 元の MiniMax H3 に comfy kitchen attention を付けた組み合わせと、1376×768 の FastH3 Omni を pytorch attention にした組み合わせ
- 参照を上限 (画像9枚、動画・音声それぞれ3本) まで渡したとき
まとめ
乗り換えるかどうかは、いまの構成と作る解像度で分かれる。Turbo LoRA から乗り換える場合、1344×768 で作るなら FastH3 Omni のほうが短い時間で終わり、864×480 では Turbo LoRA のほうが短いかほぼ同じなので、時間を理由に乗り換える差は出ない。Turbo LoRA を使わない20ステップの元の MiniMax H3 からなら、どちらの解像度でも2本目の時間は約3分の1から6分の1になった (表2・表3)。この比較はどれも、プロンプト・参照画像・seed・解像度をそろえ、ステップ数などはそれぞれのテンプレートのままにして、メインメモリ96GiB の測定機で測った結果だ。
拡散モデルは、テンプレートの既定の INT8 が基本になる。NVFP4 QAD は Blackwell 世代の GPU を前提にした拡散モデルだ。VRAM のピークは INT8 と同じくらいのまま共有GPUメモリとプロセスのコミットが少なく、OCuLink で接続した RTX 5060 Ti では時間も縮んだ。ただ、RTX 5080 で見比べた1つの seed では拡散モデルを替えると絵が途中から変わったので、切り替えるなら自分の参照で INT8 と並べて確かめる。FP8 は、RTX 5080 では時間・共有GPUメモリ・プロセスのコミットのどれも INT8 より大きかった。
長さは、RTX 5080 では測った最長の15秒 (1376×768) まで最後まで生成でき、長くするほどメインメモリ側の使用が増えた。長い動画ほど VSA の有無で差が開き、15秒では外すとサンプリングが約2倍かかった。参照は、RTX 5080 の同じ条件で、参照画像を合計2枚・3枚にするとサンプリングは1枚の約1.1〜1.3倍、参照音声1本では変わらず、音声つきの参照動画1本を映像と音声の両方でつなぐと約5倍に延びた。
FastH3 Omni を VRAM 12GB の RTX 4070 SUPER でも測り、ほかの動画モデルとあわせて動画生成用の PC の GPU とメインメモリの選び方にまとめた記事は動画生成AI用PCのおすすめスペックにある。
参考資料
- FastVideo/FastH3-Omni-Comfy (Hugging Face)
- FastVideo/FastH3-Omni-NVFP4-QAD-Comfy (Hugging Face)
- FastVideo/FastH3-Omni-NVFP4-QAD-Comfy provenance/CONVERSION.md (Hugging Face)
- FastVideo/FastH3-Omni-FP8-Comfy (Hugging Face)
- FastVideo/FastH3-Omni-FP8-Comfy provenance/CONVERSION.md (Hugging Face)
- FastVideo/FastH3-Omni-NVFP4-QAD (Hugging Face)
- MiniMax-H3 Community License Agreement (Hugging Face)
- ComfyUI v0.43.0 リリース (GitHub)
- ComfyUI v0.43.0 requirements.txt (GitHub)
- Comfy-Org/workflow_templates video_fasth3_ominiref_r2v.json (GitHub)
- Comfy-Org/workflow_templates video_minimax_h3_r2v.json (GitHub)
- ComfyUI v0.43.0 comfy_extras/nodes_minimax_h3.py (GitHub)
- ComfyUI v0.43.0 comfy_extras/nodes_sparse_attention.py (GitHub)
- ComfyUI v0.43.0 comfy_extras/nodes_model_advanced.py (GitHub)

