ローカルLLMを自宅で動かすなら、VRAM(GPUに搭載された専用メモリ)16GBが実用ラインです。タイトルにある「最低スペック」は「これ未満では動かない」という意味ではありません。VRAM 8GBでも7B級は動きますし、12GBなら14B級のQ4量子化まで載ります。そのうえでモデルを選ぶときに容量を気にせず、22B級まで素直に載せられるのが16GB、という意味での実用ラインです。RTX 5060 Ti 16GBを軸に組むと、総額は約22.2万円から(2026年4月時点の価格)。
「AI用PCは10万円で組める」という情報をネット上で見かけた人もいるだろう。しかし2026年4月時点では、VRAM 16GBのGPU(RTX 5060 Ti 16GB)だけで10.5万円以上。中古や12GB以下ならもっと安く始められますが、その分だけ動かせるモデルが絞られます。期待と現実の差は大きいが、その理由を知れば納得できるはず。ここからは、ローカルAIを快適に動かすための最低スペックを、当サイトの実測データとともに具体的な数値で示していく。
- 用途を絞らずに始めるならVRAM 16GB・RAM 32GB・SSD 1TBが実用ライン、総額約22.2万円から(2026年4月時点)。8GB・12GBでもモデルと量子化を絞れば動く
- RTX 5060 Ti 16GBで22B級まで完全GPU実行(当サイト検証環境での実測: codestral:22b が31.7 tokens/sec・VRAM 13.2GB)
- LLMと画像生成を同時に走らせるなら、次に効くのはRAM 64GBへの増設(当サイトの測定は96GB環境のため、32GB環境との比較値は未取得)
2026年のローカルAI用PCに必要な最低スペック
ローカルでAIを動かすPCを組む場合、最も予算を集中させるべきパーツがGPU。ここでは各パーツの役割と、なぜこの構成がベースラインになるのかを、初心者にもわかるよう順を追って解説する。
以下が、2026年4月時点で用途を絞らずに始める場合の実用ライン構成です。なお価格は同年4月に確認したもので、とくにメモリとGPUはその後も動いています。
| パーツ | 実用ラインの目安 | 参考価格(2026年4月時点) |
|---|---|---|
| CPU | Intel Core i5-14400F以上 | ¥25,400〜 (kakaku.com最安値・2026/04/22) |
| GPU(最重要) | GeForce RTX 5060 Ti 16GB | 約10.5万円〜 |
| RAM | DDR5 32GB(16GB×2) | 約5万円 |
| SSD | NVMe 1TB以上(第4世代なら理想) | ¥10,000〜 (kakaku.com最安値・2026/04/22) |
| マザーボード | B760チップセット以上 | 約1.2万円 |
| 電源ユニット | 750W 80PLUS Gold | 約1万円 |
| ケース | ミドルタワー | 約1万円 |
| 合計 | 約22.2万円〜 |
合計約22.2万円という数字は、ハイスペックなPC並みかそれ以上の投資。スペックを落とすほど、動かせるモデルのサイズと速度で妥協が必要になります。とくにGPUのVRAM容量は後から足せない唯一のパーツなので、自分の用途に対して足りているかを先に決めておきたいところ。
なぜVRAM 16GBがスタートラインなのか
ローカルLLM(大規模言語モデル)を動かすとき、モデルのデータはGPUのVRAMに読み込まれる。VRAMに収まりきらなければ、あふれたデータをRAM側に逃がす「オフロード」が発生し、処理速度が劇的に低下してしまう仕組み。
では、VRAM容量ごとに何ができるのか。以下の表で整理した。
| VRAM容量 | 動かせるLLMの目安 | 画像生成AI | 制約・注意点 |
|---|---|---|---|
| 8GB | 7B〜8Bパラメータの量子化モデル | SD 1.5は快適、SDXLもfp8など軽量設定なら動作(当サイト実測4.1GB) | LLM用途では選べるモデルが狭い(画像生成中心なら実用範囲) |
| 12GB | 8B〜14B(Q4)は動作可、14B超の大型でオフロード | SDXL動作可能 | 14B超・長context時に速度低下 |
| 16GB | 22Bクラスのモデルまで完全GPU実行 | SDXL快適、Flux系も動作 | 2026年の実用的なスタートライン |
| 24GB以上 | 32B超の大型モデルにも対応 | 大型ワークフローも余裕 | RTX 3090中古やRTX 5090が該当 |
押さえておきたいのは、12GBと16GBで変わるのが速度ではなく「選べるモデルの幅」だという点。VRAM 12GBのGPU(RTX 5070など)でも14BクラスはQ4量子化なら動くが、context長を伸ばしたり14Bを超える大型モデルを載せるとオフロードが発生し、生成速度が大きく落ちる。一方、16GBあれば22Bクラスのモデルまでオフロードなしで動作する。14Bクラスまでは12GBでも完全にGPUへ載るので(当サイト実測で phi4:14b が9.7GB、qwen3:14b が9.5GB)、12GBと16GBの違いは「速度が数倍変わる」話ではなく「どのサイズまで選べるか」の話です。22B級まで視野に入れるか、context長を伸ばして使うかで判断が分かれます。
ちなみに、RTX 5060 Ti には8GB版も存在する。8GB版は16GB版より1〜2万円ほど安い実勢で流通しているが、VRAM 8GB版はローカルLLMだと7Bクラスの小型モデルが中心になります。LLMを主目的にするなら16GB版を選びたいところ。
CPU・RAM・SSDの選定基準
GPU以外のパーツは、AI推論においてGPUほど優先度が高くない。ただし、最低ラインを下回ると別の問題が生じてくる。
CPUはIntel Core i5-14400F程度で十分。モデルがVRAMに収まっている限り、推論処理はほぼすべてGPUが担当するので、ハイエンドCPUに予算を回す意味は薄い。逆に、VRAMからあふれるサイズを常用するつもりならCPU側の性能とメモリ帯域が効いてきます。その分をGPUやRAMに充てたほうが、体感の改善につながる選択と言える。
RAMは32GBが最低ライン。Ollamaで14Bクラスのモデルを単体で動かす程度なら32GBで足りる。しかしLLMと画像生成AIを同時に使ったり、VRAMからあふれた分をRAMで受け止める場面では、32GBだとRAMまで足りずディスクへのページングが起きうるので64GBが欲しくなります(RAMを増やしてもオフロード自体が速くなるわけではありません)。最初は32GBで組んでおき、必要に応じて64GBに増設する前提で計画するのが賢いやり方。
SSDはNVMe接続の1TB以上。第4世代ならモデルのロード待ちがさらに短くなりますが、第3世代でも実用上の支障は小さく、避けたいのはSATA SSDとHDDの方です。AIモデルのファイルサイズは1つあたり数GB〜十数GBに達する。5〜6個のモデルを入れただけで数十GBを消費するため、容量が少ないとあっという間に限界が来てしまう。加えて、読み込み速度がモデルのロード時間に直結するので、SATA接続のSSDやHDDでは体験が大幅に悪化する。NVMe接続を選ぶ理由はここにあります。
RTX 5060 Ti 16GBのAI性能を実測データで確認
スペック表の数字だけでは「実際にどれくらいの速度で動くのか」がつかめない。ここでは当サイトの検証環境(RTX 5060 Ti 16GB / i7-14700F / 96GB RAM)で計測した実測データを紹介する。
ローカルLLM(Ollama)の実測速度
Ollamaで主要なモデルを動かした際の生成速度(tokens/sec)とVRAM使用量を、以下の表にまとめた。
| モデル | パラメータ数 | 生成速度 | VRAM使用量 |
|---|---|---|---|
| llama3.1:8b | 8B | 80.7 tokens/sec | 5.5GB |
| phi4:14b | 14B | 44.8 tokens/sec | 9.7GB |
| qwen3:14b | 14B | 43.4 tokens/sec | 9.5GB |
| codestral:22b | 22B | 31.7 tokens/sec | 13.2GB |
まず8Bクラスのllama3.1:8bに注目してほしい。80.7 tokens/secという速度は、人間が文章を読むスピードをはるかに超えている。VRAM使用量もわずか5.5GBで、16GBの半分以下しか使わない。小型モデルなら余裕たっぷりの動作。
14Bクラスはどうか。phi4:14bが44.8 tokens/sec、qwen3:14bが43.4 tokens/secを記録した。いずれも40 tokens/sec台を維持しており、チャット形式の対話で待たされる感覚はほぼない。日常的なAIアシスタントとして十分に実用的な速度と言える。
特筆すべきは、22Bのcodestral:22bが31.7 tokens/secで動作している点。コーディング特化のモデルをこの速度で回せるのは大きい。VRAM使用量は13.2GBで、16GBの枠内にしっかり収まっていた。
画像生成(ComfyUI)の実測速度
RTX 5060 Ti 16GBでComfyUIを使ったAI画像生成についても触れておく。SDXL fp8での生成は1枚あたり約12.3秒、VRAM使用量は約4.1GB。LLM実行時と比べるとVRAM消費が圧倒的に少なく、画像生成単体であれば余裕を持って動作する。
ただし注意点もある。OllamaでLLMを動かしながら同時にComfyUIで画像を生成するような使い方をすると、VRAM 16GBでは両方を載せきれない場面が出てくる。たとえばphi4:14b(VRAM 9.7GB)を動かした状態でSDXL(VRAM 4.1GB)を起動すれば、合計で13.8GB。単体なら収まる数字ですが、プロセスを2つ立てる分のオーバーヘッドとcontextの伸びが乗るため、実際には不安定になりやすい。こうした同時利用を見据えるならRAMを64GB以上にしておくと、あふれた分をディスクにページングする最悪のケースを避けられます。ただしRAM容量を増やしてもオフロード自体の遅さは解消しません(オフロード時の速度を決めるのはCPUとメモリ帯域)。速度を落としたくないなら、VRAMに収まるモデルを選ぶか同時起動を避けるのが確実です。
予算別・用途別のアップグレード戦略
約22.2万円のベースライン構成は「用途を絞らず素直に始められる」ラインです。使い込むうちに不満が出てくるポイントは想定できるので、あらかじめアップグレードの優先順位を把握しておけば、無駄な出費を避けられる。
同時利用が増えたらRAM 64GBへ
同時利用が増えてきた場合に最初に検討したいのが、RAM 32GBから64GBへの増設です。以下のような場面でRAM不足が効いてきます。
- LLMと画像生成AIを同時に立ち上げ、VRAMからあふれた分をRAM側で受け止める場面(RAMまで足りないとディスクへのページングに落ちます)
- ブラウザや他のアプリケーションを開いたままLLMを動かすと、システム全体が重くなる場面
- VRAMに収まりきらない大型モデルを試す際に、RAM不足でディスクへのページングが発生する場面(RAMが足りていればページングは避けられます)
当サイトの検証環境ではRAMを96GB搭載しているが、これは複数モデルの切り替えやマルチタスク時の安定性を確保するため。一般的な用途なら64GBで十分に快適な環境が得られる。
SSDの容量追加(1TB→2TB)も、モデルファイルが増えてくると必要になるアップグレード。ただし体感改善という意味ではRAM増設のほうが優先度が高い。
GPU交換は「速度」か「VRAM容量」かで選ぶ
GPUのアップグレードは投資額が大きいため、目的を明確にしてから検討したい方針。方向性は「速度を上げる」「載るサイズを増やす」の2つで、24GB帯のように両方を兼ねる選択肢もあります。
速度重視の場合はRTX 5080(VRAM 16GB、CUDAコア 10,752基、TDP 360W、約20万円〜)が有力な候補。VRAM容量は同じ16GBですが、CUDAコア数が4,608基から10,752基へと倍以上に増え、メモリバス幅も128-bitから256-bitへ倍になります。LLMのトークン生成に効くのは主に帯域、画像・動画生成に効くのはCUDAコア数で、どちらの用途でも上積みが期待できる構成です。なお長いプロンプトを読み込ませる処理(プロンプト評価)は演算側を使うため、そこはコア数増加の恩恵も受けます。
上位GPUの処理性能が創作活動の幅を広げた実感は、動画生成や大量画像処理を回すほど顕著になる。当サイトでもRTX 5080を使った4K動画生成ワークフローで成果を積み上げている段階で、上位GPUに投資する意味は体感できる領域に入っています(VRAM容量はRTX 5060 Ti 16GBと同じで、変わるのは速度の方)。
VRAM容量重視の場合は、24GB以上のGPUが選択肢に入ってくる。中古のRTX 3090(VRAM 24GB、約10〜15万円)なら32Bクラス以上のモデルも動作可能。ただしTDPが350Wと高く、発熱と電源容量の両面で注意が必要になる。新品ではRTX 5090(VRAM 32GB、TDP 575W、約73万円〜)が最上位だが、個人の予算としてはかなりハードルが高い。
| アップグレード先GPU | VRAM | CUDAコア | TDP | 価格帯(2026年4月時点) | メリット |
|---|---|---|---|---|---|
| RTX 5070 Ti | 16GB | 8,960基 | 300W | ¥158,000〜 (kakaku.com最安値・2026/04/29) |
メモリバス幅が5060 Tiの2倍(128-bit→256-bit・ともにGDDR7)。LLMのトークン生成は帯域が効くため差は大きい |
| RTX 5080 | 16GB | 10,752基 | 360W | ¥199,800〜 (kakaku.com最安値・2026/04/29) |
バス幅は5060 Tiの2倍の256-bit(5070 Tiと同値)。5070 Tiとの違いはCUDAコア数で、画像・動画生成で効く |
| RTX 3090(中古) | 24GB | 10,496基 | 350W | 約10〜15万円 | 24GB VRAMで32B超のモデルに対応 |
| RTX 5090 | 32GB | 21,760基 | 575W | ¥729,800〜 (kakaku.com最安値・2026/04/29) |
32GBで大型モデルも動作(70BはQ4でVRAM約42GB必要のためオフロードか低ビット量子化が前提) |
まとめ
ローカルAIを用途を絞らずに始めるなら、RTX 5060 Ti 16GBを中心に組む約22.2万円の構成が実用ラインです(2026年4月時点の価格)。VRAM 16GBあれば22B級まで完全にGPUへ載り、画像生成も単体でなら余裕を持って動くことを(LLMと画像生成の同時起動は16GBだと厳しい)、当サイトの検証環境(i7-14700F / RAM 96GB)での実測で確認しています。
「10万円でAI用PC」は現状では非現実的。しかし約22.2万円のベースラインからスタートし、同時利用が増えたらRAM増設、モデルが増えたらSSD追加、動かしたいモデルのサイズが上がったらGPU交換、という順で足していく戦略なら、長期的に無駄のない投資になります。
まず自分がやりたいAI用途を明確にし、必要なVRAM容量を上の表で照合してみてほしい。ローカルLLMでの対話がメインなら、このベースライン構成で十分に始められる。
よくある質問(FAQ)
Q: 予算10万円でAI用PCは組めますか?
A: 2026年4月時点では難しい。RTX 5060 Ti 16GB単体で約10.5万円〜するため、10万円ではGPU以外のパーツがほぼ買えない計算になる。どうしても予算を抑えたい場合、中古のRTX 3060 12GB(約3.5万〜4万円〜)を使う方法もあります。VRAM 12GBでも14BクラスのQ4量子化モデルは収まりますが(当サイト実測で phi4:14b が9.7GB、qwen3:14b が9.5GB)、context長を伸ばす場合やそれ以上の大型モデルではあふれます。またRTX 3060はメモリバス幅こそ192-bitとRTX 5060 Ti(128-bit)より広いものの、メモリ規格が1世代前のGDDR6(5060 TiはGDDR7)のぶん、実効の帯域は約360GB/sと5060 Tiの448GB/sを下回ります。同じモデルでも生成速度は落ちる、と見ておいてください。
Q: ノートPCでローカルAIは動かせますか?
A: 動かせるが制約は多い。ノートPC向けGPU(例: RTX 4060 Laptop GPU)はデスクトップ版と同じVRAM容量でも、電力制限やクロック数の違いで推論速度が落ちる。「RTX 4060」と「RTX 4060 Laptop GPU」はまったくの別物という点に注意してほしい。一方、ChatGPTやClaude CodeのようなAPI経由で動くAIツールであればGPUは不要。RAM 16GB・SSD搭載のノートPCでも快適に利用できるため、ローカル実行が必要かAPI利用で済むかを先に判断するのが得策。
Q: CPUはIntelとAMDのどちらがいいですか?
A: ローカルLLMの推論処理はGPUがほぼすべてを担うため、CPUのメーカー選びで大きな差は出ない。Intel Core i5-14400FでもAMD Ryzen 5 7600でも、AI推論速度にはほとんど影響しないのが実態。予算や入手性で選んで問題ないパーツと考えてよい。ただしCPUとマザーボードはソケットの互換性があるため、CPUを先に決めてからマザーボードを選ぶ順序だけは守ること。
本記事は AIハードウェア図鑑 が記載時点の情報をもとに執筆。製品アップデートや第三者ベンチマーク・価格・対応ランタイム等の変動で評価が変わる可能性がある。一定期間経過した内容は再検証を推奨する。
当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

