AI用PCの電源(PSU)選び方|RTX 50世代の必要ワット数・12V-2×6・80 PLUSと「容量」と「電気代」の分け方

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AI用PCの電源とは、GPUのピーク電力と瞬間スパイクを賄う容量で選ぶPC部品である。

AI用PCの電源で最初に見るべきは、GPUのTGP(総グラフィックス電力)そのものではありません。NVIDIAが公開している「推奨システム電力」です。RTX 5080なら850W、RTX 5090なら1000Wというこの数字は、GPU単体ではなく一定のCPU構成を含むシステム全体の最小目安として示されているものです。ローカルLLMやComfyUIを長時間回すAI用途では、この余裕こそが電源を落とさない鍵。まず結論から示し、その根拠を順に展開していきます。

この記事の要点

  • 容量の出発点はNVIDIA公式の推奨システム電力(RTX 5060 Ti 16GB=600W、RTX 5080=850W、RTX 5090=1000W/2026年7月時点)
  • 新規に組むならATX 3.1(PCIe CEM 5.1)準拠の電源を選ぶ。とくにRTX 5080・5090級は12V-2×6ネイティブが安心(5060 Ti〜5070 Ti級はPCIe 8-pinアダプタ給電も公式に想定)
  • 「何Wを買うか(容量)」と「毎月払う電気代(実消費)」は別軸。MoE型LLMの推論は消費電力が低くても、容量は削らない

AI用PCの電源はピークとトランジェントで選ぶ|NVIDIA推奨システム電力が最短の出発点

必要な容量を知りたいだけなら、NVIDIAが各GPUのために示している推奨システム電力を見るのが最短です。下の早見表は、RTX 50シリーズ各モデルのTGPと、NVIDIA公式の推奨システム電力、そして給電に使うコネクタをまとめたものです(いずれもNVIDIA公式仕様・2026年7月時点)。

GPU TGP NVIDIA推奨システム電力 給電コネクタ
RTX 5060 Ti 16GB 180W 600W PCIe 8-pin×1 または 300W以上の12V-2×6ケーブル(PCIe Gen5)
RTX 5070 250W 650W PCIe 8-pin×2(付属アダプタ)または 300W以上の12V-2×6ケーブル(PCIe Gen5)
RTX 5070 Ti 300W 750W PCIe 8-pin×2(付属アダプタ)または 300W以上の12V-2×6ケーブル(PCIe Gen5)
RTX 5080 360W 850W PCIe 8-pin×3(付属アダプタ)または 450W以上の12V-2×6ケーブル(PCIe Gen5)
RTX 5090 575W 1000W PCIe 8-pin×4(付属アダプタ)または 600Wの12V-2×6ケーブル(PCIe Gen5)
TGPとは?
TGP(Total Graphics Power/総グラフィックス電力)とは、そのGPUが定格で消費する電力の目安(ワット数)のことです。NVIDIAが各モデルの仕様として公開している値で、カードが高負荷時に消費する電力の設計上の目安、と考えるとわかりやすいです。

TGPと推奨システム電力を別の列に並べたのには理由があります。推奨システム電力は、TGP単体よりかなり大きく設定されています(モデルによってTGPの約1.7〜3.3倍)。RTX 5080はTGP 360Wに対して推奨850W、RTX 5090はTGP 575Wに対して推奨1000W。表の「12V-2×6ケーブル(PCIe Gen5)」は、後述する16ピンの新コネクタ用ケーブルを指します(8-pinアダプタは各カード付属)。なお、NVIDIA公式スペックでは同ケーブルを「PCIe Gen 5 cable」と表記しています。この差はCPUやストレージ、ファンを含むシステム全体を賄うための余裕を見込んだ数字だからです。NVIDIAはこの推奨値を、PCIe CEM 5.1(ATX 3.1相当)準拠のPSUを前提に示しています。NVIDIA公式仕様(2026年7月時点)。

ここで押さえておきたいのは、推奨システム電力はあくまで「システム全体」を賄う出発点だという点。ハイエンドCPUを組む、SSDを複数積む、簡易水冷のポンプやファンを増やす、といった構成では、公式推奨より一段上の容量を見込んでおくと安心です。RTX 5090で高性能CPUを併用するなら1200W級を視野に入れる、という考え方も現実的でしょう。

なぜGPUのTGP=電源容量ではないのか(トランジェントとATX 3.0/3.1)

TGPは「定格で連続的に引く電力の目安」であって、瞬間的に引く電力の最大値ではありません。近年のハイエンドGPUは、ミリ秒単位の短い時間で定格を大きく上回る電流スパイク(トランジェント)を出すことがあります。上位世代では定格の2倍近くに達した実測報告もあり、RTX 5080でもTGP 360Wに対して瞬間的に500Wを超える場面がある、という理解です。ATX 3.0規格が想定する「定格の最大2倍」は、こうした瞬間負荷をPSU側が吸収できることを求めた要件で、GPUが常に2倍を出すという意味ではありません。

この過渡的なスパイクを吸収できるように策定されたのがATX 3.0、そしてその改訂版のATX 3.1です。ATX 3.0/3.1準拠の電源は、定格の一定倍率までの短時間の負荷急増に耐える設計が要件化されています。だから同じ850Wでも、旧世代のATX 2.x電源とATX 3.1電源では、スパイク耐性が違う。TGPの平均だけを見て「360Wなら500W電源で足りる」と判断すると、この瞬間負荷で保護回路が働き、GPU高負荷時にPCが突然落ちることがあります。

手持ちのATX 2.x世代の電源を流用してRTX 50シリーズを動かす場合、容量に数字上の余裕があってもトランジェント耐性が不足することがあります。とくに12VHPWR/12V-2×6コネクタを持たない旧電源で変換アダプタを噛ませる構成は、後述の差し込み事故リスクも重なるため慎重に。旧世代でも高品質・大容量なら問題なく動く場合はありますが、新規購入ならATX 3.1準拠を優先するのが無難です。

トランジェント(過渡的スパイク)とは何か

トランジェントは、GPUが描画や演算のワークロードを瞬間的に切り替えるときに生じる、ごく短時間の電流の跳ね上がりを指します。持続時間はミリ秒以下のことも多く、平均消費電力の計測値には表れにくいのが厄介な点。だからこそ「平均は低いのに電源が落ちる」という現象が起きます。

ATX 3.0/3.1がスパイクをどう吸収するか

ATX 3.0/3.1電源は、定格出力に対して短時間であれば一定倍率までの負荷急増を許容するよう設計要件が定められています。この余裕があるおかげで、GPUのトランジェントが来ても電圧が保護しきい値を割らずに済む。NVIDIAの推奨システム電力がTGPより大きいのは、GPU単体ではなくCPUを含むシステム全体の最小目安だからです。ATX 3.x準拠のPSUは、この容量の範囲で過渡的なスパイクに対応しやすい設計要件を満たします。

12V-2×6/12VHPWRコネクタとRTX 50の給電(差し込み事故・変換アダプタ・ネイティブ)

RTX 50シリーズの上位モデルは、16ピンの12V-2×6コネクタで給電します。12V-2×6は最大600Wを供給でき、ATX 3.1およびPCIe CEM 5.1に準拠したコネクタです。前世代の12VHPWRを改訂したもので、ATX12V 3.1仕様では新設計の電源に対して12V-2×6を採用し、12VHPWRは非推奨とする方針が示されています。

New power supply designs should mount only the 12V-2×6 connector and the 12VHPWR connector should be deprecated.(新しい電源設計は12V-2×6コネクタのみを実装すべきであり、12VHPWRコネクタは非推奨とすべきである)

これはATX12V 3.1仕様に記載された方針です(出典URLは末尾の参考資料に記載)。12V-2×6と12VHPWRはケーブル自体はほぼ共通で、改善の中心はソケット側の設計にあります。12V-2×6ではセンシングピンが短く、導体端子が長くなっており、奥までしっかり挿さっていない状態を検知しやすい構造へ改良されました。ケーブルには後方互換性があり、12V-2×6ケーブルを12VHPWR側で使うこともできます。

12V-2×6と旧12VHPWRの違い

両者の電力供給能力は同じ600Wです。差は安全性の作り込みにあり、12V-2×6は差し込み不足による接触不良を起こしにくいよう端子構造が見直されています。新規に、とくにRTX 5080・5090級で組むなら、12V-2×6ネイティブ対応の一台を選ぶのが扱いやすい選択です。RTX 5060 Ti〜5070 Ti級はPCIe 8-pinアダプタでの給電も公式に想定されていますが、変換アダプタや旧規格ケーブルの流用より、ネイティブケーブルのほうが接点の信頼性で有利です。

16ピンの中身とセンスピンの役割

12V-2×6は16ピンのうち12本が電力供給用(+12Vとグラウンドが各6本)、残り4本がサイドバンド(センス)ピンです。このうちSENSE0/SENSE1の2本が、電源が供給できる最大電力をGPUに申告します。2本の組み合わせで150W・300W・450W・600Wを伝える仕組みで、たとえば両方がグラウンドなら600W対応として認識されます。RTX 5090(推奨1000W・TGP 575W)のような上位カードは、この600W申告を前提に給電します。

安全面で効くのがこのセンスピンの挙動です。12V-2×6ではセンスピンの扱いが見直され、SENSE0/SENSE1がOpen/Open(未接続)の場合は0Wとして扱われます。これにより、正しく奥まで挿さっていない状態では高い電力を流しにくい方向へ改められました。センシングピンを短く、電力端子を長くしたのも、きちんと挿さっていなければ通電しない挙動を成立させるための構造変更です。

発熱事故を避ける差し込み・ケーブルの基本

16ピンコネクタで報告される発熱・溶融トラブルの主因は、奥まで挿さっていない差し込み不足(半挿し)です。カチッとロックがかかるまで確実に挿す、無理に折り曲げてコネクタ根元にテンションをかけない、この2点を守るだけでリスクは大きく下がります。MSIの一部電源のように、12V-2×6コネクタを黄色に色分けして差し込み不足を目視しやすくしたり、コネクタの電流状態を監視してブザーやポップアップで警告する機能を備えた製品も登場しています。こうした保護機能はあくまで補助であり、まず正しく挿すことが前提です。

変換アダプタの多用は避けてください。8-pinを複数束ねて16ピンへ変換するアダプタは、接点が増えるぶん発熱ポイントも増えます。RTX 50世代を組むなら、必要なコネクタをネイティブで備えたATX 3.1電源を選ぶのが安全策。

80 PLUS効率は24時間AI運用でどれだけ効くか(電気代・発熱・騒音・スイートスポット)

電源の変換効率を示すのが80 PLUS認証です。同じ出力を得るのに壁のコンセントからどれだけ電力を引くかが等級で変わり、その差は熱と電気代とファン音に表れます。下の表は115V内部・50%負荷時のおおよその効率です。

80 PLUS等級 効率(50%負荷・目安) 特徴
Bronze 約85% 入門帯。軽負荷の一般用途向け
Gold 約90% 価格と効率のバランス。AI用途の実用ライン
Platinum 約92% 長時間高負荷で発熱・電気代に効く
Titanium 約94%(10%負荷でも約90%) 最上位。軽負荷でも効率が落ちにくい

この効率値は80 PLUSの115V/230V試験条件に基づく値で、日本の100V環境での実効率は製品・負荷・温度で多少前後します。等級間の相対差の目安として読んでください。

効率が数%違うだけでも、24時間動かし続ける運用では効いてきます。画像生成のバッチ処理やファインチューニングでGPUを長時間フル稼働させるなら、GoldとBronzeの差は電気代と排熱、ひいてはファンの回転数と騒音の差になって返ってくる。短時間しか使わないなら効率差の絶対額は小さいので、Bronze〜Goldで十分というケースもあります。

ここで誤解しやすいのが、80 PLUSは「効率」を保証する認証であって、保護回路の充実度や部品品質、静音性を直接保証するものではない、という点です。ファン故障時の保護や静音性は、Cybenetics認証など別の軸で評価されます。効率の等級だけで電源の総合的な良し悪しは決まりません。

認証が保証するもの/保証しないもの

80 PLUSが保証するのは変換効率のみ。日本メーカー製コンデンサの採用、低負荷でファンを止めるゼロファンモード、ファン故障時の自動シャットダウンといった要素は、認証の枠外で各製品が個別に備えるものです。効率スイートスポットはおおむね50%負荷付近にあり、常用ピーク時の負荷が定格の50〜60%に収まる容量を選ぶと、効率の良い帯域で使えます。容量を大きく取りすぎて常に低負荷で回すと、かえって効率の良い帯域から外れ、コストも無駄になりますね。

容量(何Wを買うか)と実消費(電気代・発熱)は別問題

ここがこの記事で最も伝えたい切り分けです。読者が混同しがちな2つの軸を、はっきり分けて考える必要があります。

一つは容量。何Wの電源を買うかは、ピーク電力とトランジェントで決まります。画像生成や動画生成、学習はGPUをTGP近くで長時間回し、推論でも瞬間スパイクは出る。ここは削れません。NVIDIA推奨システム電力を出発点に、余裕を持たせる方向で決めます。

もう一つは実消費。実際に払う電気代や発熱、ファン音は、瞬間最大ではなく平均消費電力で決まります。そしてローカルLLMの推論は、この平均がかなり低い。推論はトークンを吐くたびに負荷が上下するバースト的な処理で、GPUがずっとフルに張り付くわけではないからです。さらにMoE(Mixture of Experts)型のモデルは、全パラメータのうち一部だけを毎回使うため、消費電力がdense型に比べて大きく下がります。

モデル 種別 推論時の消費電力(RTX 5080単体)
gemma4:26b(A4B) MoE 約73W
qwen3.5:35b-a3b(A3B) MoE 約47W
phi4:14b dense 約301W
qwen3:14b dense 約287W

当サイトの検証環境(RTX 5080単体・2026年4月計測、推論定常時のboard power中央値)では、MoE型のgemma4:26b(A4B)が推論時の消費電力約73W、qwen3.5:35b-a3b(A3B)は約47Wにとどまった一方、dense型のphi4:14bは約301Wを記録しました。この測定条件ではMoE型がdense型のおよそ4分の1前後まで下がりました。ただし量子化・ランタイム・バッチ・コンテキスト長で倍率は変わるため、一般化はできません。

ここで重要なのは、この数値はあくまで「推論時の消費電力」の実測であって、電源容量(何Wを買うか)の話ではない、という区別。MoE中心の推論なら電気代も発熱も小さく済みます。でも、だから小さい電源で足りるわけではありません。ピークとトランジェントは処理内容が変われば跳ね上がるので、容量はNVIDIA推奨から削らない。「電気代が安い」と「容量を削れる」は、まったく別の話です。

実際の消費電力をご自身の環境で把握したいなら、Windows/Linuxのどちらでも次のコマンドでGPUの瞬間消費電力を1秒ごとに追えます。
nvidia-smi --query-gpu=power.draw,power.limit --format=csv -l 1

power.drawが現在の消費電力、power.limitが上限です。推論と画像生成でこの値がどう動くかを見れば、自分のワークロードが平均でどれくらい電力を引くかがつかめます。これは実消費の把握には役立ちますが、電源容量の判断はあくまでピーク+トランジェントで行う点を忘れないでください。

推論のバースト性と平均消費電力

推論中のGPUは、プロンプトを読み込む段階と、トークンを一つずつ生成する段階で負荷が変動します。生成が進むあいだも電力は一定ではなく、上下を繰り返す。この平均を取ると定格よりかなり低くなるため、「思ったより電気代がかからない」という結果になりやすいのです。

「電気代が安い」と「容量を削れる」は別

MoE推論主体の使い方なら月々の電気代は抑えられます。ただし同じPCで画像生成や学習も回すなら、そのときのピークとトランジェントに合わせて容量を確保しておく必要がある。容量は「一番重い使い方」に合わせ、電気代は「平均の使い方」で決まる、と分けて考えるのが実務的です。

GPUを2枚使う構成では、電源の考え方が枝分かれします。ポイントは、その2枚目が本体の電源から給電されるのか、独立した電源を持つのかです。

内蔵で2枚目を挿す場合、消費電力は本体のシステム電源に合算されます。たとえばRTX 5080(TGP 360W)に内蔵でRTX 5060 Ti 16GB(TGP 180W)を足すと、GPUだけで540W。ここにCPUや周辺を加えると常用ピークは700W前後になり、最低でも1000W級、効率・静音の余裕まで見るなら1200W級が要る計算です。2枚挿しを「なんとなく余裕がありそう」で見積もると足りなくなります。

一方、Oculinkや外付けeGPUドックで2枚目をつなぐ場合は事情が違います。MINISFORUM DEG1のような外付けドックの多くは独立した電源ユニットを持ち、本体のシステム電源には乗りません。当サイトのデュアルGPU構成は、RTX 5060 TiをOculink外付けの別電源で運用しています。この内蔵合算と外付け別電源の違いを知らないと、必要容量を過大にも過小にも見積もってしまう。デュアルGPUでローカルLLMを動かす実測は別記事で詳しく扱っています。

内蔵デュアルGPUの電源合算計算

内蔵2枚挿しの必要容量は、各GPUのTGP合計にCPUと周辺の消費を足し、そこにトランジェント余裕を乗せて考えます。GPU 540WにハイエンドCPUの実効200W前後、ストレージやファンを加えると、常用ピークで700W前後。1000W電源だと負荷率は約70%で、最低ラインとしては検討できますが、効率スイートスポットの50〜60%負荷を狙うなら1200W級以上が現実的です(700W÷0.6≒1167W)。

Oculink/eGPUは別電源で本体PSUを圧迫しない

外付けドックが独立電源を備えていれば、2枚目のGPU分は本体の電源容量計算から外して構いません。これはメリットで、本体側を無理に大容量化せずに総VRAMを増やせる。ただしドック側の電源が2枚目のGPUの推奨を満たしているかは、ドックの仕様で確認しておく必要があります。

AI用途別の考え方と選び方チェックリスト(将来アップグレード余裕含む)

同じAI用PCでも、主にやることで電源に求める性格が変わります。用途別に整理しておきましょう。

推論主体(ローカルLLM中心)なら、GPU1枚+NVIDIA推奨システム電力で十分です。そもそもどのGPUを選ぶか、PC全体を何から揃えるかは、VRAM 16GBのGPU用途別比較AI用PCの最低スペックガイドも参考にしてください。前述のとおり平均消費電力は低めなので、効率等級に神経質になりすぎる必要はありません。余った容量は、将来GPUを増設・載せ替えるときの頭金として活きます。

画像生成や動画生成(ComfyUI・拡散モデル)は、GPUをTGP近くで長時間回す使い方。ここでは効率(80 PLUS Gold以上)と冷却、そして耐久性が効いてきます。発熱と電気代、ファン音が積み上がる領域だからです。学習(QLoRAなどのファインチューニング)も同様に高負荷が持続するため、容量にも効率にも余裕を持たせたい。

将来の上位GPUやVRAM増量モデルへの載せ替えを見据えているなら、今の時点で一段上の容量を選んでおくと使い回せます。電源は数年またいで使えるパーツなので、GPUより長い時間軸で考えるのが得策です。

推論/画像生成・動画/学習でどう変わるか

推論は「容量ほどほど・効率ほどほど」で足ります。画像生成・動画・学習は「容量に余裕・効率高め・冷却しっかり」。この温度感の違いを押さえておけば、過不足のない一台を選べます。ノートPCやミニPCはPSU選定そのものが不要な代わりに、GPUのTGP上限が本体設計で固定される点も頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

電源選びチェックリスト

上から順に満たしていけば、AI用PCの電源選びで大きく外すことはありません。

確認項目 基準
容量の出発点 使うGPUのNVIDIA推奨システム電力(RTX 5080=850W等)
規格 ATX 3.1(PCIe CEM 5.1)準拠。5080/5090級は12V-2×6ネイティブ
効率 80 PLUS Gold以上(長時間運用ならPlatinum/Titanium)
常用負荷 常用ピークが定格の50〜60%に収まる容量
拡張余裕 将来のGPU増設・載せ替え分を上乗せ
保証・耐久 長期保証と日本メーカー製コンデンサ等の耐久要素

電源は単体で決めきらず、AI用PC全体の構成で考えると失敗が減ります。容量に直結するのはGPUですが、メモリ(RAM)の選び方SSDの選び方も同じ用途起点で揃えておくと、パーツ間でちぐはぐになりません。

容量別の電源の目安と売れ筋の一例

ここまでの基準を、GPU構成ごとの具体的な容量に落とすと次のようになります。製品欄は当サイトの主観ではなく、価格.comの売れ筋ランキング上位(各容量帯・ATX 3.x)から2026年7月時点で選んだ一例です。

GPU構成の目安 推奨する電源容量 電源の売れ筋の一例(価格.com上位・2026年7月時点)
RTX 5060 Ti/5070(1枚) 650〜750W Corsair RM750e 2025(750W・ATX 3.1・Cybenetics Gold)
RTX 5070 Ti/5080(1枚) 850〜1000W COUGAR GR 850(850W・ATX 3.1・80 PLUS Gold)
RTX 5090/高性能CPU 最低1000W(余裕・静音重視は1200W以上) Corsair RM1000x 2024(1000W・ATX 3.1・Cybenetics Gold)
内蔵デュアルGPU 1200W級以上 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+(1200W・ATX 3.0・80 PLUS Platinum)

ランキングや在庫・価格は日々変動するため、購入時は最新の売れ筋と価格を確認してください。容量は「一番重い使い方」に合わせ、常用ピークが定格の50〜60%に収まる一台を選ぶと、効率・静音・耐久の余裕が生まれます。とくにRTX 5090に高性能CPUを併用し、静音・余裕を重視するなら1200〜1500W級も選択肢に入ります。

容量の起点 NVIDIA推奨システム電力(2026年7月時点)
コネクタ 12V-2×6(最大600W供給・ATX 3.1/PCIe CEM 5.1準拠)
効率の実用ライン 80 PLUS Gold以上
常用負荷の目安 定格の50〜60%

まとめ

AI用PCの電源選びは、2つの軸を分けて考えると迷いません。容量(何Wを買うか)は、GPUのTGPそのままではなく、ピークとトランジェントを織り込んだNVIDIA推奨システム電力が出発点。RTX 5060 Ti 16GBなら600W、RTX 5080なら850W、RTX 5090なら1000Wを起点に、CPUや拡張分の余裕を上乗せします。規格はATX 3.1/PCIe CEM 5.1準拠を基本に、上位モデルでは12V-2×6ネイティブを優先し、24時間運用が絡むなら80 PLUS Gold以上で効率を確保。

もう一つの軸が実消費です。実際に払う電気代と発熱は平均消費電力で決まり、MoE型LLMの推論なら当サイト検証でも消費電力は低く出ました(電力あたりの生成効率も実測しています)。ただしこれは推論時の消費電力の話であって、容量を削ってよい理由にはなりません。「安く済む使い方」と「一番重い使い方」を分けて、容量は重い方に合わせる。この切り分けができれば、AI用PCの電源で失敗する余地はほとんど残りません。

よくある質問

Q. RTX 5080に必要な電源容量は何Wですか?

NVIDIA公式の推奨システム電力は850Wです(2026年7月時点)。RTX 5080のTGPは360Wですが、推奨850WはCPUや周辺を含むシステム全体の最小目安です。ハイエンドCPUを併用したり将来の拡張を見込むなら、1000W級を選んでおくと安心。ATX 3.1(PCIe CEM 5.1)準拠の製品から選び、5080級では12V-2×6ネイティブが扱いやすいです。

Q. 12V-2×6と12VHPWRは何が違いますか?

電力供給能力はどちらも最大600Wで同じです。違いは安全性の作り込みで、12V-2×6はソケット側の端子構造を見直し、差し込み不足を起こしにくくしています。ATX12V 3.1仕様では新しい電源に12V-2×6を採用し、12VHPWRは非推奨とする方針。ケーブルには後方互換性があります。新規に、とくに上位モデルで組むなら12V-2×6ネイティブ対応が安心です。

Q. 80 PLUSはGoldとTitanium、AI用途ではどちらがいいですか?

使い方次第です。ローカルLLMの推論中心で稼働時間が短めなら、Goldで十分に実用的。一方、画像生成のバッチ処理やファインチューニングでGPUを長時間フル稼働させるなら、PlatinumやTitaniumの効率差が電気代・発熱・ファン音に効いてきます。24時間運用が絡むほど上位等級の価値が出る、と考えるとよいでしょう。

Q. Oculink外付けGPUの電源はどう数えればいいですか?

外付けeGPUドックの多くは独立した電源を持つため、本体のシステム電源容量には合算しません。たとえば2枚目をOculinkドックで動かす場合、その分は本体PSUから外して計算できます。逆に内蔵で2枚挿しするなら、両方のTGPを本体電源に合算する必要があります。内蔵か外付けかで計算方法が変わる点に注意してください。

Q. MoEモデルなら消費電力が低いので小さい電源で足りますか?

足りるとは限りません。MoE型LLMの推論は当サイト検証でも消費電力が低く出ましたが、それは平均消費電力(実消費)の話です。電源容量はピークとトランジェント(瞬間最大)で決めるべきもので、同じPCで画像生成や学習も回すなら、その重い負荷に合わせた容量が要ります。電気代が安いことと容量を削れることは別問題です。

参考資料

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