AI用PC 購入ガイド|用途別・予算別のおすすめ構成とGPUの選び方

AI用途のPCは、ゲーム用PCとは選ぶ基準が変わります。いちばん効くのはGPUのメモリ容量(VRAM)で、「何を・どのモデルで動かすか」によって必要量が決まります。このガイドは、各GPUの公式仕様を基礎に、別記事で公開している実機検証の結果も参考にして、用途と予算から構成を引けるよう全体像をまとめたものです。実測の条件と数値は検証環境ページや各検証記事で確認できます。個別の比較や手順は各記事に譲り、ここでは「何を基準に、どう選ぶか」を整理します。

AI用PCは、GPUのメモリ容量(VRAM)を軸に「何を・どのモデルで動かすか」で構成が決まります。
多くの用途は16GBが実用の起点。用途と予算が決まれば候補はかなり絞れます。大型LLMや高品質な動画生成は、32GB(RTX 5090)や、対応ソフトでの2枚運用が視野に入ります。

エントリー
RTX 5070 12GB
軽量LLM・SDXL
本命 16GB ★
RTX 5060 Ti/5080
7〜14B・画像・軽量動画・LoRA
ハイ 32GB
RTX 5090
大型LLM・高品質動画
2枚運用
分割対応LLM
大型を分割
まず試す多くの用途の実用ゾーン大型・上級

選び方の結論:用途と予算が決まれば候補はかなり絞れる

順番はシンプルです。

  1. 最も重要なのはVRAM。モデルがVRAMに収まれば高速に動きます。収まらない場合は、実装によってシステムRAM/CPUへの退避(オフロード)・低VRAM設定・API利用・エラーのいずれかに分かれ、RAMへ逃がせる場合も大きく遅くなります。使うツールごとの対応を確認します。
  2. 用途で必要VRAMが決まる。チャットやコーディングか、画像か、動画か、学習かで目安が変わります。
  3. 残りを予算で配分。GPUを軸に、メモリ・ストレージ・電源を用途に合わせて足していきます。

この3段で、迷う範囲はかなり狭くなります。以下、用途→GPU→周辺→予算別構成の順に見ていきます。

まず用途を決める(必要VRAM・メモリの早見)

用途ごとの目安です。いずれも「これ以上あれば余裕」という下限〜推奨の幅で示します。LLMは標準的な量子化・短〜中程度のコンテキストを前提とし、量子化方式(Q4/Q5/Q8など)やコンテキスト長で必要量は変わります。

用途 目安VRAM システムRAM ひとこと
ローカルLLM(チャット・コーディング) 12〜16GB 32〜64GB 7〜8B級は12GBでも。7〜14B級は16GBが中心。27B超は16GBだと不足しがち
画像生成(SDXL・Flux系) 12〜16GB 32GB〜 SDXLは12GBでも動作。Flux系はモデル・精度・量子化・解像度で必要量が大きく変わり、16GBは軽量設定やFP8/量子化・オフロードを前提とした目安です
動画生成 16GB〜(モデルにより32GB級〜) 64GB〜 動画はバージョン・ワークフロー差が大きく、軽量・量子化のワークフローは16GB前後で試せるものもあれば、現行の高品質モデルは32GB級以上を要するものもあります。対象の公式要件を確認してください
LoRA・ファインチューニング 8GB〜(対象により16〜24GB+) 32GB〜 小型LLMや低解像度なら8GB級から試せる場合がありますが、SDXL・動画・大規模モデルでは16〜24GB以上、モデルによってはさらに必要です

※目安として、Q4量子化ではおおむね14B級で約9GB前後、30B級で約18〜20GB、70B級で40GB超になります(実行時はKVキャッシュ等も加わるため、モデル本体サイズだけで判断しないでください)。

用途別 必要スペック早見VRAM 16GBでどこまでできるか(完全ガイド)AIコーディング用ローカルLLMの必要スペック

GPUの選び方と現行モデル

AI用途では、ゲームのfpsよりVRAM容量を先に見ます。容量が足りないと、速いGPUでも大きいモデルは動かせないか、あふれて極端に遅くなるためです。次にメモリ帯域や演算性能で速度が決まります。実用上の基準は16GBで、ここを境に「動かせるモデルの幅」が変わります。

▼ 主なAI用途向けGPU(2026年6月時点。全ラインナップではありません。最新仕様・全モデルは各公式製品ページで確認)
NVIDIA RTX 50:RTX 5090=32GB/RTX 5080=16GB/RTX 5070 Ti=16GB/RTX 5070=12GB/RTX 5060 Ti=16GB(8GB版あり)/RTX 5060=8GB
AMD RX 9000(RDNA 4・GDDR6):RX 9070 XT=16GB/RX 9070=16GB/RX 9060 XT=16GB(8GB版あり)

AI用途での現実的な狙いどころは次の通りです。

  • まず16GBを確保:RTX 5060 Ti 16GB(コスト重視)/RTX 5070 Ti・RTX 5080(速度重視)。多くの用途で扱いやすい基準です。
  • 12GBクラス(RTX 5070)は用途を選ぶ:7〜8B級のLLMやSDXLなど、12GBに収まるワークフローが主な対象です(快適さは解像度・バッチ・拡張・実装で変わります)。16GBを前提とする大きめのモデルは収まりません。ゲーム性能ではRTX 5070が上位でも、AI用途ではVRAMが効くため、販売価格がRTX 5070より低い場合は、16GBのRTX 5060 Tiの方が動かせるモデルの幅が広い場面があります。
  • 8GBクラス(RTX 5060等)は軽い用途向け:小型LLMや軽い画像生成に限られます。
  • 大型モデルを単体で:VRAM 32GBのRTX 5090。30B前後までの量子化LLMや、32GB内に収まるコンテキスト長・設定のモデル、動画の軽量/量子化ワークフローを1枚で扱いたい場合の選択肢です。70B級などは量子化後でも32GBを超える例があるため、対象モデルの実サイズとKVキャッシュを確認してください。動画は要件差が大きく、公式要件が32GBを超えるモデルはクラウドやプロ向けGPUが前提になります。

同じ16GBでも世代・帯域で速度は変わります。具体的な比較は各記事へ。

RTX 5060 Ti 16GBでどこまでできるかRTX 4070 Super vs RTX 5060 Ti 16GBRX 9070 vs RTX 5070

メモリ・ストレージ・電源の選び方

メモリ(RAM)

最低32GB、余裕を見るなら64〜96GBです。AIでRAMが効く場面ははっきりしています。VRAMに収まらないモデルをRAMへ退避(オフロード)して動かすとき、そして画像のアップスケールのようにRAMを大量に使う処理のときです。DDR5では容量を優先しつつ、クロックとレイテンシのバランスも見ます。

AI用PCのメモリ(RAM)選び方ガイドDDR5はクロックとレイテンシのどちらを優先すべきかDDR5の買い時・必要容量

ストレージ(SSD)

NVMe SSDの1〜2TBが目安です。ローカルモデルのファイルは大きく、複数を試すとすぐに容量を使います。

AI用PCのSSD選び方ガイド

電源(PSU)

GPUの消費電力を基準に、システム全体で余裕を持たせます(例:RTX 5080はTGP 360Wですが、NVIDIAはFounders Edition基準で必要システム電源を850Wとしています。実際の必要容量はCPUや構成・AIBモデルで変わります)。GPUを2枚運用する場合は、PCIeスロットや補助電源ケーブル・PSU容量を確認します。外付けGPUでは、Oculink等はデータ接続のため、ドック側に別途電源(ATX/SFXなど)と補助電源の確保が必要です。

デュアルGPUでローカルAIはどう変わるかMINISFORUM DEG1 Oculink eGPUドック 実機レビュー

予算別のおすすめ構成

用途と狙うモデル規模で、構成は次のように整理できます。価格は変動するため、ここでは「何ができるか」を中心に示します(最新価格は各販売ページで)。

エントリー:まず動かしてみる

  • GPU:RTX 5070 12GB または RTX 5060 Ti 16GB/メモリ:32GB/SSD:1TB
  • RTX 5070(12GB)は7〜8B級のLLMやSDXLなどの軽い画像生成向け。RTX 5060 Ti(16GB)なら7〜14B級のLLM、画像生成、LTX系の軽量・量子化ワークフローのような動画モデルまで一通り試せます(現行の高品質な動画モデルは別途VRAM要件の確認が必要)。AI主目的なら16GBが安心です。

ミドル:速度と余裕を取る

  • GPU:RTX 5080(またはRTX 5070 Ti)/メモリ:64GB/SSD:2TB
  • できること:エントリーの範囲を快適にこなしつつ、やや大きめのモデルや長めのコンテキストにも手が届きます。

ハイ:大型LLM・一部の動画生成・並列運用まで

  • GPU:VRAM 32GBのRTX 5090(32GBに収まる大型LLMや、32GB級で動く動画モデルを1枚で)、またはRTX 5080+2枚目(llama.cpp・vLLMなど分割対応LLMで、2枚の有効VRAMに収まる30B前後〜一部の大型量子化モデルを分割する用途。70B級は2枚16GBでも不足する場合あり)/メモリ:96GB/SSD:2TB+
  • できること:30B前後までの大型量子化LLMや、16GBでは収まりにくい一部の動画・画像ワークフローが射程に入ります(70B級は2枚16GBや32GBでも収まらない場合があり、対象モデルの実サイズで確認)。動画は要件差が大きく、32GBを超える公式要件のモデルはクラウド/プロ向けGPUが前提です。ただし2枚運用が効くのは主に、llama.cpp・vLLMなどマルチGPU分割に対応したLLM実装で大型LLMを分割する場面です。画像・動画生成や未対応ツールでは2枚目を使えないことが多く、その用途では1枚あたりのVRAMが大きいRTX 5090が向きます(詳しくはFAQ)。
注:構成は一例で、唯一の正解ではありません。狙うモデルが決まっているなら、用途別の早見から必要VRAMを逆算するのが確実です。

デスクトップ・ノート・ミニPCの選び方

  • デスクトップ:VRAM・電源・拡張性で最も有利。AIを本格的に使うなら基本はこちらです。
  • ノート:可搬性が利点。Laptop版GPUは同名でも電力枠が低く、VRAMも型番ごとにデスクトップ版と異なるため、搭載GPUのVRAMとTGPを個別に確認します。
  • ミニPC・NPU搭載機:省スペース。専用GPUのない機種は、NPU対応ランタイム・内蔵GPUの共有メモリ量・メモリ帯域で限界が決まりやすく、大型モデルには向き不向きがあります。軽い用途や常時稼働では選択肢になります。

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用途別おすすめ候補の早見

次の表は、本記事の前提(標準的な量子化・短〜中程度のコンテキスト・各用途のワークフロー要件の確認が前提)での候補整理です。

主な用途 入門(下限) 本命
軽量LLM(〜8B)・お試し RTX 5070 12GB RTX 5060 Ti 16GB
チャット・コーディングLLM(7〜14B) RTX 5060 Ti 16GB RTX 5080
大型LLM(27B超) RTX 5080+2枚目(分割対応LLMで2枚の有効VRAM内・30B前後まで/70B級は不足あり) RTX 5090(32GB・収まる量子化/長さで)
画像生成(SDXL/Flux系) SDXL: RTX 5070 12GB/Flux系は軽量・量子化前提 RTX 5080以上
動画生成 RTX 5060 Ti 16GB(旧・軽量モデル) RTX 5090(32GB内に収まるモデル・量子化/軽量ワークフロー向け。32GB超の公式要件はクラウド/プロ向け)
LoRA・学習 RTX 5060 Ti 16GB RTX 5090

各用途の実測詳細は、用途別・GPU別の各記事へ

よくある質問

VRAM 16GBで足りますか?
本記事の前提(標準的な量子化・短〜中程度のコンテキスト)では、7〜14B級のLLMやSDXL系の画像生成は16GBで試しやすい範囲です。対象モデル・量子化・解像度・バックエンドで必要量は変わるため、個別の要件と検証記事を確認してください。動画はモデル差が大きく、LTX系のように16GB以上で動くものもあれば、13B級・学習・高解像度・長尺では32GBでも不足する場合があります。対象モデルの公式要件を確認してください。27B超のLLMや長いコンテキストは16GBでは不足しがちです。分割対応のLLM実装なら複数GPU分割やCPU/RAMへの部分退避で動く場合もありますが、ツール依存で、RAM退避は大幅に低速化しやすいため、快適さを優先するなら1枚あたりのVRAMが大きいGPUを選びます。
GPUは2枚にすべきですか?
2枚で「何でもできる」わけではありません。効くのは主に、llama.cppやvLLMなどマルチGPU分割に対応したLLM実装で、1枚に収まらない大型モデルを2枚に分けて動かす場面です。画像・動画生成はツールやワークフローごとに複数GPU利用の可否が分かれ、対応していない構成では2枚目が使われず遊ぶこともあります。VRAMも単純な足し算にはならず、速度が必ず上がるわけでもありません。まず1枚で足りるかを用途別の早見で確認し、収まらない大型モデルを扱う明確な理由があるときに検討するのが現実的です。
中古GPUはありですか?
AI用途では世代よりVRAM容量が効くため、容量を優先して選ぶなら選択肢になります。逆に、ゲームでは評価が高くてもVRAMが12GBにとどまるカード(前世代のRTX 4070 Superなど)は、AIで動かせる範囲が限られるため、中古でも積極的にはおすすめしません。保証や消費電力、ファンの劣化にも注意しましょう。
AMDではだめですか?
RX 9070 XT/9070やRX 9060 XT(16GB)はゲーム性能も高く、AI用途でもCUDA前提の拡張・手順が残るツールではNVIDIAが導入しやすい場面があります。一方で、Ollama・PyTorch(ROCm)・ComfyUIなどAMD対応が進んでいる公式経路も増えています。ただしOllamaはOSやバックエンド(Linux/WindowsのROCm、Vulkan)で対応GPUや前提が異なるなど、対応可否はOS・GPU世代・ドライバ・バックエンドで変わります。使いたいソフトのROCm/Vulkan/DirectML対応を先に確認してください。

参考資料

本ガイドの構成目安は、各GPUの公式仕様と、実機(Intel Core i7-14700F/96GB DDR5/RTX 5080+RTX 5060 Ti 各16GB/Oculink)での検証結果を踏まえたものです。測定条件(計測時期・モデル名やタグ・測定回数と集計方法・GPU実載確認・推論設定・コンテキスト長など)は検証環境および各検証記事に記載します。GPUのラインナップ・価格・在庫・各モデルの必要VRAMは更新やツールの対応状況で変わるため、最新は各公式・販売ページでご確認ください。

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