エントリー価格帯のAIノートPCは何ができるのか|Snapdragon C搭載機のNPUと割り切りどころ

Snapdragon C搭載エントリーAIノートPCのNPUで動く軽量AIのイメージ PC構成

エントリーAIノートPCとは、統合NPUで軽量なAIを省電力にこなす低価格帯のノートPCである。

300ドル以上をターゲットにしたエントリーAIノートPC(日本での実売価格は未公表)で「できること」は、対応アプリによる字幕・音声処理やノイズ除去、軽い写真補正、小さなローカルモデルの軽い推論まで。ここから先、たとえば量子化前の大きなローカルLLMや高解像度の画像・動画生成になると、内蔵NPUでは射程外で、VRAMを積んだGPU機が必要になります。この線引きを最初に握っておくと、安いNPU機で足りるのか、それともGPU機まで踏み込むべきかを、ご自身の用途から逆算して判断できます。

Qualcommが2026年5月に発表した「Snapdragon C」は、まさにこのエントリー帯(300ドル以上を狙う価格帯)に向けた統合NPU搭載プロセッサ。本記事では、この発表を時点フックにしつつ、主語はあくまで「300ドル以上のエントリーAIノートPC一般」に置いて、NPUの実用範囲とGPU機との住み分けを整理します。

この記事の要点

  • ・エントリーNPU機の射程は、字幕・ノイズ除去・画像補正・小型ローカルモデルの軽い推論まで
  • ・大規模ローカルLLMや高解像度の画像・動画生成はVRAMが要るため、GPU搭載機の領域
  • ・Web・動画・資料作成+軽いAI+長時間バッテリー重視ならエントリー機で十分、重い推論を回したいならGPU機を検討

エントリー価格帯のAIノートPCとは(定義と前提整理)

エントリー価格帯のAIノートPCは、内蔵NPU(AI処理専用の回路)を載せた、おおむね300ドル以上をターゲットに、2026年内の市場投入が見込まれる低価格ノートPCを指します。狙いは明確で、Webブラウジング・動画視聴・資料作成といった日常作業を、静かで発熱の少ない筐体と長時間バッテリーでこなすこと。そこに「軽いAI機能」を上乗せできる点が、従来の格安ノートとの違いになります。

Qualcommは米国時間2026年5月28日(日本時間5月29日)に「Snapdragon C Platform」を発表しました。同社の発表によれば、Snapdragon Cは学生・家庭・小規模事業者など、より幅広い層が現代的なPC体験に手を届かせられるよう設計されたエントリー帯プロセッサで、300ドル以上の価格帯を狙うとしています。発表では、応答性のある性能・静音で低発熱な筐体・終日駆動のバッテリーに加え、エントリー帯向けにAI機能を担う統合NPUを内蔵すると説明されています。市場投入は2026年後半が見込みとされており、具体的な対応機種はこれから出そろう段階です。

ここで気をつけたいのが、主役はあくまで「エントリー帯のAIノートPCというカテゴリ」だという点。Snapdragon Cはその具体例の一つにすぎません。同じ価格帯にはIntel・AMDの統合GPU/NPU搭載機も並びますし、NPUの実力はプロセッサごとに差があります。「Snapdragon Cだから何でもAIが動く」という読み方はしないでください。発表時点では性能を示す数値(NPUの処理能力など)が公表されていないため、ここでは過度に持ち上げず、エントリー帯NPU機の一般的な実用範囲から話を組み立てます。

価格についても先に断っておきます。Qualcommが示した「300ドル以上」はドル建ての発表値で、円換算は為替で動くため本記事では固定しません。日本での実売価格は搭載機が出そろってから判断するのが現実的です。「2026年6月時点ではドル建て発表のみ」と理解しておけば、後から価格が動いても本筋は揺らぎません。

そもそもNPUとは何をする回路か

NPU(Neural Processing Unit)は、AIの推論処理を省電力でこなすために特化した演算回路です。CPUは何でも順番に処理する汎用エンジン、GPUは並列計算が得意な大型エンジン、NPUはその中間で「決まった形のAI計算を、少ない電力で常時動かす」のが得意な小型エンジン、というイメージで捉えると分かりやすいでしょう。

NPUの真価は、ピーク性能の高さよりも電力あたりの効率にあります。たとえばWeb会議中ずっと背景ノイズを消し続ける、カメラ映像から人物を切り抜き続ける、といった「常時動かしっぱなし」の処理をCPUやGPUで回すと電力とバッテリーを大きく食います。NPUに任せれば、バッテリー駆動のまま静かに動かせる。エントリーAIノートPCがNPUを載せる理由は、まさにこの省電力・常時稼働の相性の良さにあります。

エントリーNPUで実際に動く軽量AI機能

エントリー帯のNPUが現実的に担えるのは、「軽くて、常に動いていてほしくて、できれば電池で長く使いたい」タイプのAI機能です。具体的には、対応アプリによる字幕や文字起こし、Web会議のノイズ除去や背景ぼかし、写真の自動補正や軽いアップスケール、そして小型のローカルAIモデルの軽い推論。いずれも処理の形がある程度決まっていて、NPUが効率よくさばける領域に収まります。

エントリーNPUで動くAIとGPU機が要るAIの境界エントリーNPU機で動くのは、字幕・文字起こし、ノイズ除去・背景ぼかし、写真補正・軽いアップスケール、小型モデルの軽い推論など、軽量で常時稼働・省電力なAI。大規模ローカルLLM(14B級以上)や高解像度の画像・動画生成は射程外で、大容量・高帯域VRAMを積んだGPU機が必要。エントリーNPUの境界 — 動くAI / GPU機が要るAI✓ エントリーNPU機で動く・リアルタイム字幕・文字起こし・ノイズ除去・背景ぼかし(カメラ効果)・写真の補正・軽いアップスケール・小型ローカルモデルの軽い推論軽量・常時稼働・省電力(電池で長く使える)→ GPU機が必要(射程外)・大規模ローカルLLM(14B級以上)・高解像度の画像・動画生成(SDXL等)分かれ目=VRAM容量・高帯域・連続演算の重さ大容量・高帯域VRAM/大電力・据え置き前提境界「動く」と「日常的に快適」は別。エントリー機は軽量タスクの補助と割り切ると役立つ。
図:エントリーNPU機の射程と、GPU機が必要になる領域の境界

Windows側のオンデバイスAI機能とも噛み合います。OS標準のカメラ効果(背景ぼかし・自動フレーミング・視線補正)などのWindows Studio Effectsは、対応NPU・対応カメラ・OEMのドライバ対応などを満たす機種で利用できます(高度な効果はCopilot+/40TOPS級を前提とし、背景ぼかしなど一部の効果はCopilot+ PCでなくても対応NPUとOEMドライバー次第で使える場合があります)。Snapdragon CはNPU内蔵と発表されていますが、TOPS値が未公表のため、実際に動くかは各搭載機の公式仕様での確認が必要です。CPUに任せると発熱とバッテリー消費が増える処理を、NPUが肩代わりする。結果として、エントリー機でも「ファンが唸らず、バッテリーが保ったまま、AI効果が効いている」状態を狙えます。エントリーNPU機の価値は、派手な生成AIをぶん回すことではなく、こうした地味で常用される機能を快適にすることにあります。

NPUの効果が一番分かりやすいのはバッテリー駆動時。電源につながず外で使うとき、ノイズ除去やカメラ効果をNPUに逃がせるかどうかで駆動時間が変わります。エントリー機を選ぶなら「電源に挿さなくても軽いAIが効くか」を基準にすると、NPU搭載の意味を体感しやすいでしょう。

字幕・音声・画像補正など常時稼働系AI

常時稼働系のAIは、エントリーNPU機の主戦場です。オンライン会議や動画視聴中のリアルタイム字幕、マイクに乗る環境音のリアルタイム除去、カメラ映像の背景処理。これらは一度オンにしたら使っている間ずっと動き続けるため、処理の重さよりも「動かし続けても熱と電池に優しいか」が効いてきます。

写真・画像まわりの補正も同様です。撮った写真の自動色補正、低解像度画像の引き伸ばし、簡単な背景除去といった処理は、NPU対応アプリならNPU側で軽快にこなせます。処理時間はアプリ・モデル・画像サイズ・NPU性能で変わり、Windows PhotosのSuper ResolutionなどCopilot+限定機能は対象外の場合があります。Snapdragon C搭載機での実測前は、対応アプリが明示する軽量処理に限定して考えるのが安全です。ただし「数百枚を一括で高品質アップスケール」「動画を丸ごと高解像度化」となると話は別。連続して重い演算を浴びせる使い方は、NPUの守備範囲を外れていきます。このあたりが、後で触れるGPU機との境界線になります。

小型ローカルモデルはどこまで現実的か

小型のローカルAIモデルをエントリー機で動かす話になると、期待値の調整が要ります。結論を先に言えば、ごく小さなモデルでの軽い処理(短文の要約、簡単な分類、定型的な文章補完など)は射程に入りますが、本格的な対話や長文生成を快適に回す用途は、エントリーNPU機の得意分野ではありません。

理由は、モデルを動かすために必要なメモリ帯域と容量、そして連続演算の負荷にあります。大きめのモデルは、読み込むだけでもメモリを大量に使い、生成のたびに重い計算を続けます。エントリー帯の統合構成は、この「大きい・重い・連続」の三拍子に向いていません。動くか動かないかで言えば極小モデルは動きますが、「実用的な速度で快適に」というラインを引くと、軽量タスク止まりと考えておくのが安全です。Snapdragon系のモバイル向け推論がLinux上でどこまで現実的かは、llama.cpp b8755でSnapdragon Hexagon対応|Linux上のモバイル推論はどこまで現実的かでも検証していますので、モバイルNPUでのローカル推論に踏み込みたい場合は併せて確認してください。

エントリー機で小型モデルを「動かせる」ことと、それが「日常的に使えるほど快適」であることは別問題。ここを混同すると、安いNPU機を買ってから「思ったより重い」と感じる落とし穴にはまります。軽量タスクの補助として割り切れば十分役立つ、というのが現実的な見立てです。

Copilot+ PCの40TOPS要件とエントリーNPUの距離

Windowsの一部AI機能には、NPU性能の足切りラインが存在します。Microsoftが公開しているCopilot+ PCの要件では、40TOPS級以上のNPUに加え、対応SoC・16GBのDDR5/LPDDR5メモリ・256GB以上のストレージなどが求められます。2026年6月時点の公式要件で対象SoC例として挙げられているのはSnapdragon X seriesなどで、Snapdragon Cはこの対応SoC例に含まれません。Qualcomm公式発表ではSnapdragon CのNPU TOPS値は公表されていません。一方、報道ではQualcommがSnapdragon CはCopilot+をサポートしないと確認したとされており、Acer Aspire Go 15も最大8GBメモリ構成のため、少なくとも現時点ではCopilot+ PCとして扱うべき機種ではありません。TOPSは1秒あたりの演算回数(兆回)を示す指標で、NPUの処理能力の目安に使われます。Copilot+向けの一部機能(リアルタイム翻訳や高度な画像処理など)は、この40TOPSというラインを超えるNPUを前提に設計されています。

Copilot+ PCの要件とエントリーNPU機の距離Copilot+ PCの主要要件はNPU 40 TOPS級以上・メモリ16GB・ストレージ256GB以上・対応SoC。Snapdragon C搭載のエントリー機(例 Acer Aspire Go 15)はNPUのTOPS非公表・メモリ最大8GBで16GB要件に未達のためCopilot+非対応とみられる。一方、字幕やノイズ除去、一部のWindows Studio Effectsは対応NPUとOEMドライバ次第で別枠で使える。Copilot+ PC の要件 と エントリーNPU機の距離Copilot+ PC の主要要件・NPU 40 TOPS級 以上・メモリ 16GB(DDR5 / LPDDR5)・ストレージ 256GB 以上・対応SoC(例:Snapdragon X series)Snapdragon C 機(例:Acer Aspire Go 15)・NPUのTOPS:非公表・メモリ:最大8GB → 16GB要件に未達・公式の対応SoC例に含まれない・→ Copilot+非対応とみられる(報道)距離別枠で使える(Copilot+ でなくても)字幕・ノイズ除去・背景ぼかし等の常時稼働AIや一部のWindows Studio Effectsは、対応NPU+OEMドライバ次第で利用可。→ Copilot+ 対応の有無と、日常的に役立つAI機能の有無は分けて考える。
図:Copilot+ PCの要件と、Snapdragon Cエントリー機の距離(別枠で使える軽量AIも整理)

ここでエントリーNPU機との距離が問題になります。Copilot+の足切りは40TOPS級。一方で、エントリー帯の統合NPUがこの水準に届くかどうかは、プロセッサ次第です。前述のとおり、Snapdragon Cは報道とAcer第一号機の仕様の両面からCopilot+の要件には届かないとみられます。したがって、RecallやCopilot+専用のリアルタイム翻訳字幕といったCopilot+限定機能は、現時点のSnapdragon C搭載機では対象外と考えておくのが妥当です。

当サイトでは別記事で、40TOPS級NPUを積んだCopilot+ PCの実用域と、RTX GPUとの役割分担を整理しています。そこで見えたのは、40TOPSというラインはあくまで「Copilot+の特定機能を動かす入口」であって、それ自体がAI性能のすべてを決めるわけではないという点。エントリー機がCopilot+の足切りに届かなくても、字幕・ノイズ除去・カメラ効果といった常時稼働系のAIは前述のとおり対応機種・対応アプリの範囲で使えます。Copilot+対応の有無と、日常的に役立つAI機能の有無は、分けて考えるのが現実的です。

TOPSの数値だけでNPUの実力を判断しないでください。同じ40TOPSでも、対応する精度(INT8/INT4など)や、アプリ側がそのNPUに最適化されているかで体感は大きく変わります。カタログのTOPS値は「足切りラインを超えているか」の確認には使えますが、「だから速い・快適」と直結させるのは早計です。

40TOPSという基準が意味すること

40TOPSという数字は、Microsoftが「Copilot+の特定機能を安定して動かすために必要」として引いたラインです。逆に言えば、この基準は「Windowsの一部新機能の入場券」であって、すべてのAI作業の必要条件ではありません。Copilot+の40TOPS要件に届かない機種でも、対応NPUとOEMドライバが用意されていれば、背景効果・標準の目線補正・自動フレーミング・音声フォーカスなど一部のWindows Studio Effectsを使える場合があります。ただし、Snapdragon C搭載機での対応可否は各製品の公式仕様確認が必要です。

エントリー機を検討するとき、TOPS値は次の使い分けで読むと迷いません。Copilot+の最新機能をどうしても使いたいなら、搭載機が40TOPS級を満たすかを公式情報で確認する。そこにこだわらず、字幕・ノイズ除去・写真補正といった実用機能が目的なら、TOPS値は二の次で、バッテリー駆動時の快適さや静音性を優先する。数字に振り回されず、ご自身が使いたい機能から逆算するのが賢い読み方です。

大規模ローカルLLM・画像生成はなぜGPU機が必要か

エントリーNPU機の射程外、つまり「GPU機でなければ現実的でない」領域がはっきり存在します。代表例が、量子化前後の大きなローカルLLMを実用速度で動かすこと、そしてStable DiffusionやComfyUIでの高解像度の画像・動画生成。これらが要求するのは、瞬間的なAI演算性能だけでなく、モデル全体を載せきる大容量・高帯域のVRAM(GPU専用メモリ)です。ここがエントリー機との決定的な分かれ目になります。

ローカルLLMをGPUで高速に動かす場合、VRAM容量と帯域が大きな制約になります。VRAMに収まらないモデルもCPU・システムメモリ併用で動く場合はありますが、速度は大きく落ちやすいのが実情です。モデルはVRAMに載りきってこそ高速に動き、載りきらずシステムメモリにあふれると一気に失速する。だからこそGPU機が必要になります。当サイトの検証環境(RTX 5080 VRAM 16GB + RTX 5060 Ti VRAM 16GB/i7-14700F/RAM 96GB、各GPU個別16GB・デュアル構成で合計32GB。単一GPUのVRAMが32GBになるわけではありません)で計測した範囲では、VRAM 16GBのRTX 5080で7B〜8B級のモデルは余裕をもって高速に動きます。たとえばLlama 3.1 8B(Ollama: llama3.1:8b)で139 tokens/sec、mistral:7bで153 tokens/secを記録しました(いずれも100% GPU常駐)。一方、26B級のgemma4:26b(約20GB)は16GBに収まらず、約24%をCPUにオフロードして31 tokens/secまで落ちます。16GBのVRAMでも、モデルが容量を超えるとCPUオフロードが入り速度が落ちることが実測で確認できました(測定条件: RTX 5080単体、Ollama 0.23.3/ドライバ610.47、num_ctx=4096・num_predict=200・temp=0・seed=42、各3回の中央値。VRAMはollama /api/ps、オフロードはollama ps)。

この数値が示すのは、7B〜8B級を高速かつ安定して回すには、VRAMと高帯域メモリを備えた専用GPUが有利になるという点です。本例のllama3.1:8bはVRAM 5.5GBで8GB級GPUにも収まりますが、エントリーNPU機が積む共有メモリ構成では、この帯域と容量を確保できません。NPUがいくら省電力で優秀でも、大きなモデルを載せて高速に回す土俵には立てない。住み分けが生まれる根っこはここにあります。

下の表に、エントリーNPU機とGPU機の射程を整理します。

用途 エントリーNPU機(300ドル〜) GPU機(VRAM 16GB級〜)
リアルタイム字幕・文字起こし 対応アプリ/対応機能なら省電力化に期待。ただしCopilot+系の高度機能は要件確認が必要 可能だが過剰
ノイズ除去・カメラ効果 得意(NPUの主戦場) 可能だが過剰
写真の補正・軽いアップスケール 1枚単位なら実用 一括・高品質も快適
7B〜8B級ローカルLLM 実用速度は厳しい 快適(5080で139〜153 tokens/sec)
20B超のローカルLLM 射程外 VRAM次第(16GBでも速度は低下)
高解像度の画像・動画生成 射程外 GPU機の領域
バッテリー駆動の長時間運用 得意(終日駆動を狙える) 不利(大電力・据え置き前提)

表の読み方はシンプルで、上半分(常時稼働系の軽量AI)はエントリーNPU機の土俵、下半分(大きなモデル・高解像度生成)はGPU機の土俵。ご自身がやりたいことが表のどこに当たるかで、必要なマシンが決まります。

VRAMが決めるローカルAIの上限

ローカルAIの上限は、ほぼVRAM容量で決まります。モデルはパラメータ数が大きいほど多くのメモリを必要とし、量子化(精度を落としてサイズを圧縮する手法)で削っても限度があります。VRAMに載りきれば高速、あふれれば失速。この単純な原理が、動かせるモデルの天井を引きます。

当サイトの検証環境では、VRAM 16GBのRTX 5080でgemma3:12bが84 tokens/sec、phi4:14bが81 tokens/secと、14B級まで快適(いずれも100% GPU常駐)。22B級のcodestral:22bもVRAM 13.9GBで収まり58 tokens/secと実用的でした。一方、約20GBのgemma4:26bは16GBに収まらずCPUオフロードが発生して31 tokens/sec前後に低下します。16GBという容量は、14〜22B級までは収まれば実用、26B級以上はCPUオフロードで失速、というのが実測から見える線引きです。エントリーNPU機の統合メモリは、この土俵にそもそも上がれません。「ローカルで大きなモデルを動かしたい」が目的なら、VRAMを積んだGPU機が出発点になります。

重いAIは電力・冷却・サイズも跳ね上がる

大きなモデルや高解像度生成を回す世界では、性能と引き換えに電力・冷却・筐体サイズがまとめて跳ね上がります。エントリーNPU機が「静音・低発熱・終日バッテリー」を売りにするのとは、ちょうど正反対の方向です。

最上位クラスのモバイルGPUを載せたハイエンドゲーミングノートは、それを安定動作させるために大電力対応の強力な蒸気チャンバー冷却と大容量バッテリーを組み合わせる構成が一般的です。据え置きのワークステーション側でも、AI推論需要の高まりを受けて、複数のハイエンドGPUを1台に収める構成と、それを冷やすための大型クーラーが用いられます。いずれも、エントリー帯とは桁の違う電力・冷却・筐体を前提にした世界。重いAIを回すほど、マシンは大きく・熱く・電気を食う方向へ振れていきます。

この対比が示すのは、「AIノートPCが欲しい」という一言の中に、実は両極端の世界が同居しているという点です。省電力で軽いAIを常用したいのか、それとも大電力でもいいから重いAIを回したいのか。どちらを向いているかで、選ぶべきマシンは正反対になります。次のパートでは、Snapdragon C搭載機で現時点わかっていること・いないことを整理したうえで、ご自身をどちら側に振り分けるかの判断軸へ進みます。

Snapdragon C搭載機で現時点わかっていること/いないこと

Qualcommが発表した内容を、公式発表として整理します。同社のプレスリリースで明らかにされているのは次の通り。

  • 価格帯は300ドル以上のエントリー機を狙う
  • 統合NPUを搭載しオンデバイスAIに対応
  • 省電力・静音設計とall-day battery lifeを掲げる(実駆動時間は機種・設定・用途で変動)
  • 市場投入は2026年後半の見込み

一方、断定できない項目もはっきりしています。搭載第一号機として、Acerが「Aspire Go 15」(Snapdragon C版)を発表済みです。Acer公式によれば、同機はSnapdragon Cを搭載し、最大8GBメモリ、最大512GBストレージ、15.6型ディスプレイ、USB-C、HDMI、Wi-Fi 6Eを備えたエントリー機で、発売時期は後日案内とされています。一方で、8コア構成やバッテリー容量、冷却方式といった詳細、Snapdragon C自体のNPU性能(TOPS値)やコア詳細、日本での確定発売日・円換算価格は、本記事執筆時点(2026年6月)では確認できません。これらは購入前に各地域の正式な製品ページで確認するのが安全です。価格はドル建て発表のため、円での実売は為替次第。「300ドル=日本円でいくら」と固定せず、ドル基準で捉えてください。Snapdragon CのNPUの正確なTOPS値は公式には非公表です。一方、報道ではQualcommがCopilot+非サポートと確認したと伝えられ、上記のAspire Go 15も最大8GBメモリでCopilot+が求める16GBに届きません。少なくとも現時点では、Snapdragon C搭載機をCopilot+ PCとして扱うべきではないというのが妥当な見方です。

割り切りどころ — どんな使い方なら「買い」か

向いているのは、Web閲覧・動画視聴・資料作成が中心で、そこに字幕生成や画像補正といった軽いオンデバイスAIを添えたい人。携帯性と静音、長時間バッテリーを最優先する層にはエントリーNPU機が素直な選択です。

向いていないのは、大規模ローカルLLMや高解像度の画像・動画生成を回したい人。この用途はVRAMを積んだGPU機が出発点になります。当サイトの検証環境(RTX 5080 16GB+RTX 5060 Ti 16GB/i7-14700F/RAM 96GB)でも、14B級まで快適・20B超は量子化前提という線引きでした。同じSnapdragonでもローカルLLM推論の現実度はllama.cpp b8755でSnapdragon Hexagon対応|Linux上のモバイル推論はどこまで現実的かで詳しく扱っています。

まとめ

Snapdragon C搭載のエントリー機は、軽量なオンデバイスAIを静かに省電力でこなす道具。大規模ローカルLLMはGPU機に任せる、と用途を絞れば、300ドル以上を狙うエントリー機として有力な選択肢になり得ます。

発表元 Qualcomm(米国時間2026年5月28日)
価格帯 300ドル以上(ドル建て・円換算は為替次第)
AI 統合NPU搭載(軽量オンデバイス向け)
投入時期 2026年後半の見込み
第一号機 Acer Aspire Go 15(Snapdragon C版・発売時期は後日案内)
Copilot+ 非対応とみられる(報道でCopilot+非サポートと伝えられ、第一号機は最大8GBで16GB要件に未達/TOPS値は公式非公表)
未公表 Snapdragon C自体のNPU TOPS値・コア詳細/日本での確定発売日・円換算価格

よくある質問

Q. Snapdragon C搭載機でローカルLLMは動く?

小型の軽量モデルを軽く動かす程度なら現実的ですが、14B級以上の大規模モデルはVRAMを積んだGPU機が前提です。エントリーNPU機の射程外と考えてください。

Q. NPUとGPU、AI用途でどっちが要る?

字幕・ノイズ除去・画像補正など常時稼働の軽量AIはNPUで足ります。大規模LLM推論や高解像度の画像・動画生成はGPUのVRAMが必要です。用途で振り分けるのが正解。

Q. Snapdragon C搭載機はCopilot+ PCになりますか?

現時点ではCopilot+ PCとして扱うべきではありません。Snapdragon CのNPUのTOPS値は公式には非公表ですが、報道ではQualcommがCopilot+非サポートと確認したと伝えられ、第一号機のAcer Aspire Go 15も最大8GBメモリでCopilot+要件の16GBに届きません。そのためRecallやCopilot+専用のライブ字幕(リアルタイム翻訳)などは対象外と見ておくのが安全です。一方で、Copilotキーや通常のWindows 11のAI機能、対応アプリの軽量AIは利用できます。

参考資料

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