ONEXStationとは、OneXPlayerが発売したRyzen AI Max+ 395搭載のAI向けミニPCです。
2026年4月11日、OneXPlayerがAMD Ryzen AI Max+ 395(Strix Halo)を搭載した新型ミニPC「ONEXStation」を発売しました。初回価格2,999ドル、MSRPは3,599ドル。筐体サイズは186×193×62mmと小柄です。Liliputing: ONEXStation 発表記事が初出となった発表で、Strix Halo搭載ミニPCの価格設定・I/O構成・冷却設計が公開されました。「このクラスのミニPCでAIは動くのか」「dGPU構成の自作PCと比べてどうなのか」といった疑問を、ひとつずつ整理していきます。
・ONEXStationは128GB LPDDR5Xをユニファイドメモリとして扱える設計
・TDPは55W/85W/120Wの3段階に可変、ワークロード別に切り替え可能
・2,999ドルの価格はdGPU純粋性能より「容量と筐体サイズ」を重視する人向け
ONEXStationはローカルLLMをどこまで動かせる?
Strix Halo世代の最大の魅力は、128GB LPDDR5Xを256-bitバスでCPUとGPUが共有できる点です。AMD Ryzen AI Max+ 395 公式製品ページによると、Ryzen AI Max+ 395はZen 5アーキテクチャの16コアCPUとRDNA 3.5アーキテクチャの40 CU Radeon 8060S iGPU、XDNA 2 NPU(50+ TOPS)を統合しており、大容量メモリをそのまま推論用に割り当てられます。これにより、dGPUのVRAMでは載せきれないサイズのモデルを量子化後に扱う選択肢が広がります。
LPDDR5X-8000を256-bitバスで運用した場合の理論帯域は約256GB/s。JEDEC JESD209-5C LPDDR5 標準仕様に準拠した数値で、ハイエンドdGPUのGDDR7(NVIDIA RTX 5090で約1,792GB/s)と比べると7分の1程度になります。容量で勝ち、帯域で譲るというトレードオフが構造的に組み込まれています。
モデルサイズと必要メモリの関係を整理すると、ONEXStationが実用域に入るレンジが見えてきます。INT4量子化を前提とした場合、パラメータ数の概ね半分以下の容量で読み込めるため、70B級のモデルもVRAM共有領域に収まる計算になります。長文コンテキスト(128K以上)を扱う際のKVキャッシュも、ユニファイドメモリ側で確保できるため、メモリ上限で詰まりにくい構造です。
| モデル規模 | FP16必要メモリ | INT4量子化時 | ONEXStationでの実用度 |
|---|---|---|---|
| 7B〜13B(軽量) | 14〜26GB | 4〜8GB | 余裕。複数モデル常駐可能 |
| 30B〜35B(中規模) | 60〜70GB | 18〜22GB | 長文コンテキストも保持可能 |
| 70B(大規模) | 140GB | 35〜45GB | 96GB VRAM割当で動作可能域 |
| 120B以上(超大規模) | 240GB+ | 60〜80GB | 量子化精度を下げて辛うじて到達 |
当サイトの検証環境(RTX 5080 / i7-14700F / 96GB RAM)でqwen3.5:35b-a3bを計測した際は20.8 tokens/sec、gemma4:26bは38.9 tokens/secという結果でした。ONEXStationではここまでの速度は期待しづらく、Strix Halo搭載機の実機ベンチマークでは、Phoronix: AMD Strix Halo Linux ベンチマークで報告された通り、CPU性能ではモバイル向け最上位クラスに達しつつ、GPU側はRDNA 3.5の40 CU構成で中位dGPU相当に留まる傾向が示されています。「大きなモデルを載せられる代わりに、純粋なトークン速度は控えめ」というポジション付けが妥当です。
メモリ容量を最優先する用途なら有力候補。速度優先ならdGPU構成を検討する方が素直です。
2,999ドルという価格はAI用PCとして妥当?
初回2,999ドル、MSRP 3,599ドルという価格設定をどう捉えるかは、用途次第です。Strix Halo搭載機は複数ベンダーから投入されており、価格帯と構成を横並びで比較するとONEXStationのポジションが見えてきます。
| 構成 | 価格帯(USD) | メモリ | 筐体サイズ | 強み |
|---|---|---|---|---|
| ONEXStation | $2,999〜$3,599 | 128GB LPDDR5X | 186×193×62mm | 小型 + フルI/O |
| Framework Desktop(Strix Halo) | $1,999〜$2,699 | 32〜128GB LPDDR5X | 4.5L ITX | 修理性 + 拡張性 |
| GMKtec EVO-X2 | $1,799〜$2,499 | 64〜128GB LPDDR5X | 148×148×56mm | 価格優位 |
| RTX 5080自作PC | $2,500〜$3,500 | 32〜96GB DDR5 + 16GB VRAM | ATX等 | 純粋推論速度 |
Framework Desktop 公式ページはStrix Halo搭載でより安価な選択肢を提供しており、修理性・拡張性の面でアドバンテージがあります。一方でONEXStationの単純なトークン生成速度だけを見るなら、同価格帯でRTX 5080(参考価格20万円〜)にRAM 32〜96GBを組み合わせた自作PCの方が、ピーク性能は上回るケースが多くなります。ただしONEXStationが提供しているのは「128GBユニファイドメモリ」「186×193×62mmのアルミ筐体」「オールインワン設計」という3点セット。自作では得にくい小型性と大容量メモリを同時に成立させたい用途では、価格に見合う価値が出てきます。
クラウドAPI利用との費用比較も整理しておくと判断しやすくなります。たとえばAnthropic API 料金表のClaude Sonnetクラスを月100万トークン規模で継続利用した場合、年間で十数万円〜数十万円のランニングが発生します。ローカル推論で本体価格を回収する想定額が、おおむね1〜2年で本体価格を超えるレンジに入る計算になります。データを外部に出さずに完結させたい、モデルを自由に切り替えたいといった要件がある場合、初期投資としての妥当性が高まります。
AI用PCの最低スペック構成から整理したい場合は、AI用PCの最低スペックガイド|RTX 5060 Ti+RAM 16GBで始めるローカルAI環境を合わせて参照すると比較軸が見えやすくなります。
TDP 55W/85W/120Wの可変設計は何が嬉しい?
ONEXStationはソフトウェアからTDPを55W / 85W / 120Wに切り替えられます。AMDの公式仕様ではRyzen AI Max+ 395のcTDPレンジは45W〜120WとされておりAMD公式 cTDP 45-120W 仕様、ONEXStationはその上限近くまでを実装したことになります。前面にはファン速度を上げて熱余裕を確保する「ターボボタン」も備わっており、用途別に運用モードを使い分けられる設計です。
ワークロードごとの最適TDPは、処理時間・発熱・騒音のバランスで決まります。連続走らせる場面と短時間ピークの場面で、推奨される設定が変わってきます。
| TDPモード | 消費電力 | 適したワークロード | 連続運転の目安 |
|---|---|---|---|
| 静音モード | 55W | 軽量LLM推論 / コード補完 / 長時間バッチ | 24時間稼働も可能 |
| 標準モード | 85W | 中規模LLM / RAG処理 / 軽量画像生成 | 数時間〜半日 |
| ターボモード | 120W | 大規模LLM / 動画生成 / ゲーミング | 短時間ピーク用途 |
ローカルLLMの推論のように長時間連続で走らせるワークロードでは、55W〜85Wに下げることで発熱と騒音を抑えつつ処理を継続できます。逆にゲーミングや動画エンコードなど短時間のピーク性能が欲しい場面では120Wに上げる、という切り替えが可能。冷却は3ヒートパイプとトライファンで構成され、ミニPC筐体としては大型クラスの放熱設計です。
cTDPを下げて運用すると、トークン生成速度はピーク比で20〜30%程度低下しますが、消費電力は半分以下に収まります。年間の電気料金で見ても、55Wで24時間連続稼働した場合の試算は、1kWh単価31円(東京電力エナジーパートナー 料金表準拠)で年間約1.5万円。一般的なデスクトップGPUを高負荷で動かし続ける場合に比べて低めの水準に収まります。
13ポートのI/OとWi-Fi 7はリモートサーバー用途で活きる?
ONEXStationは前面と背面を合わせて13ポートのI/Oを備えます。前面はUSB 3.2 Gen 2×2、USB4×1、UHS-II SDカードスロット、3.5mmオーディオコンボジャック、ターボボタン。背面はDC電源、3.5mmオーディオ、2.5GbE RJ45、USB 3.2 Type-A×1、USB4 Type-C×1、DisplayPort×1、HDMI×1、USB 2.0×2。さらにWi-Fi 7とBluetooth 5.4を搭載しています。
USB4はThunderbolt 3/4と物理互換性があり、40Gbpsの帯域で外部GPU・高速ストレージを接続できますUSB-IF: USB4 公式仕様。Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)は理論上最大46Gbpsを実現する規格で、6GHz帯のMLO(Multi-Link Operation)対応により有線並みの低遅延が期待できますIEEE 802.11be 標準仕様。
| 用途 | 必要なI/O | ONEXStationでの対応 |
|---|---|---|
| 推論サーバー公開 | 2.5GbE以上 / DP/HDMI | 2.5GbE RJ45 + DP + HDMI 標準装備 |
| 外付けGPU/SSD接続 | USB4 / Thunderbolt | USB4×2基(40Gbps) |
| ヘッドレス無線運用 | Wi-Fi 6E以上 | Wi-Fi 7(IEEE 802.11be) |
| 周辺機器接続 | USB Type-A 複数 | USB 3.2×3 + USB 2.0×2 |
この構成はリモートワークステーションやホームラボ用途と相性が良好。2.5GbEがあればLAN経由でのモデルファイル転送や推論サーバー公開が現実的な速度で回ります。USB4が2基あれば外部SSDや周辺機器を高速接続でき、Wi-Fi 7は有線を敷けない環境でも安定した帯域を確保できます。
ヘッドレス運用を想定する場合でも、DisplayPortとHDMIが別々に出ている点は初期設定やメンテナンス時に独立した出力を確保できる利点があります。
ONEXStationで生成AIの動画制作までこなせる?
Radeon 8060S iGPUと128GBメモリの組み合わせは、テキスト生成以外のワークロードでも選択肢を広げます。AMDのROCmスタックはバージョン6.x系で対応モデルが拡大しておりAMD ROCm 公式ドキュメント、PyTorchやTransformersといった主要フレームワークの公式サポートが進んでいます。PyTorch 公式インストールガイドでもROCmビルドが選択肢として明示されており、Linux環境ではCUDA同等の手順でフレームワーク導入が可能です。
AMD ROCm software is a brand name for the entire suite of tools, programs, and APIs designed to help developers leverage the power of AMD GPUs for high-performance computing and AI applications.
— AMD ROCm: What is ROCm?
ただしComfyUIやStable Diffusion系のワークフローでは、現時点でのソフトウェア対応状況がNVIDIAのCUDA環境に比べて未成熟な領域が残ります。AMDのGPUスタックはDirectMLやROCm経由での動作が中心で、CUDA前提のカスタムノードを使う場合は動作確認が必要になるケースがあります。
動画生成のローカル実行に関しても、Stable Video DiffusionやAnimateDiff系のワークフローはCUDA最適化が先行しているため、ROCm環境では同等のパフォーマンスに到達するまでチューニングが必要になる場合があります。ONEXStationの128GBメモリは長尺フレームの中間表現を保持する場面で活きる反面、リアルタイム性を求めるなら現状はdGPU構成に軍配が上がります。Hugging Face Diffusers ONNX 最適化ガイドのようなクロスプラットフォーム推論を選ぶアプローチで、CUDA依存を回避する道も整いつつあります。
日本でONEXStationを買うときに気をつけるべきことは?
発売直後のStrix Halo搭載機は、ONEXStation以外にも複数のベンダーが相次いで投入しており、元記事でも「Ayaneoが自社のStrix Halo搭載ハンドヘルドNext 2の先行予約を停止した」事例が紹介されています。供給と価格が読みにくい市場である点は前提として把握しておく必要があります。
日本での流通は執筆時点では未確定です。仮に1ドル150円前後のレートで換算すると、初回2,999ドルは日本円で45万円前後、MSRP 3,599ドルなら54万円前後という水準になります。関税・消費税・輸送費・保証対応の手間を含めると、これより上振れするのが通例です。
輸入時のコスト構造は以下のように整理できます。本体価格に対して、最終的な総額は1.2〜1.4倍程度に膨らむのが一般的です。
| 項目 | 概算(MSRP $3,599の場合) | 備考 |
|---|---|---|
| 本体価格 | 約540,000円 | 1ドル150円換算 |
| 消費税(10%) | 約54,000円 | 国内販売時 |
| 関税・通関手数料 | 約20,000円 | 個人輸入の場合 |
| 輸送費 | 約15,000〜30,000円 | EMS / DHL |
| 合計(個人輸入) | 約630,000〜650,000円 | 保証は限定的 |
関税については、PCを個人輸入する場合は無税扱いとなるケースが多いものの、消費税は課税対象です税関 個人輸入と一般輸入。海外通販で16,666円を超える商品はすべて課税対象となるため、ONEXStationクラスは例外なく消費税が発生します。
初期ロットはドライバやファームウェアの成熟度に課題が残ることが多く、購入直後に最新ファームウェアへの更新が必要になる場面もあり得ます。予備機がない環境で本番運用に投入する計画なら、安定版リリースが整うまで様子を見るという選択肢もあります。
出典・参考
- AMD Ryzen AI Max+ 395 公式製品ページ — Zen 5 16 コア / RDNA 3.5 40 CU / XDNA 2 NPU 50+ TOPS / cTDP 45-120W の公式仕様
- Liliputing: ONEXStation 発表記事 (2026-04-10) — 128GB LPDDR5x-8000 / 96GB VRAM 割当 / 55W・85W・120W トグル / 186×193×62mm 筐体
- TechPowerUp: ONEXStation $2,999 launch report — One-Netbook 公式アナウンス時点の価格・I/O・冷却構成 (3 ヒートパイプ / トリプルファン)
- AMD ROCm 公式ドキュメント — Radeon GPU での AI 推論サポート状況
- USB-IF: USB4 公式仕様 — USB4 40Gbps / Thunderbolt 互換性
- IEEE 802.11be 標準仕様 — Wi-Fi 7 の MLO・帯域仕様
- JEDEC LPDDR5 標準仕様 — LPDDR5X 帯域・電圧仕様
- 税関 個人輸入と一般輸入 — 課税基準・関税扱い
まとめ:ONEXStationは誰に向いているか
ONEXStationが真価を発揮するのは「省スペースで大容量のユニファイドメモリを扱いたい用途」。dGPU構成の自作PCに対して、純粋な推論速度では譲る場面があるものの、128GB LPDDR5Xを256-bitバスで共有できる設計は独自のポジション。TDP可変・13ポートI/O・Wi-Fi 7というフル装備も、リモートワークステーション用途で役立つ構成です。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| APU | AMD Ryzen AI Max+ 395(Zen 5 16コア + RDNA 3.5) |
| iGPU | Radeon 8060S |
| メモリ | 128GB LPDDR5X / 256-bitバス |
| ストレージ | 1TB PCIe Gen 4×4 M.2 SSD標準、第2スロットで最大8TB |
| 冷却 | 3ヒートパイプ + トライファン |
| TDP | 55W / 85W / 120W(ソフトウェア可変) |
| I/O | USB4×2、USB 3.2 Gen 2×3、USB 2.0×2、2.5GbE、UHS-II SD、DisplayPort、HDMI |
| 無線 | Wi-Fi 7 + Bluetooth 5.4 |
| 筐体 | 186×193×62mmアルミ |
| 価格 | 初回2,999ドル / MSRP 3,599ドル(2026年4月時点) |
速度か容量か、据え置きか持ち運びか。この2軸で自分の用途を整理したうえで判断すれば、ONEXStationが候補に入るかどうかは見えてきます。
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本記事は AIハードウェア図鑑 編集部 が記載時点の情報をもとに執筆。製品アップデートや第三者ベンチマーク・価格・対応ランタイム等の変動で評価が変わる可能性がある。一定期間経過した内容は再検証を推奨する。

